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2016年9月26日月曜日

連載10 無意識的に「制限する信念」と「行動」に向き合うコーチング

無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載10 無意識的に「制限する信念」と「行動」に向き合うコーチング

人は誰でも「信念」を持って生きています。「信念」を大きく分けると、自分の行動を「促進させる信念」と「制限させる信念」があります。「一念岩をも通す」ということわざがあるように、信念は強いエネルギーを持ち、肯定的にも否定的にも働きます。「信念」は本人が意識している時もありますが、多くの信念は無意識的で、その信念はその人の「行動」につながっています。逆にいうと、その人の「行動」を観察していると、その人が持っている「信念」が分かることがあります。

例えば、会社でも自営業でも自分は成功している経営者だという信念があると、その経営者はそれに伴った行動を取ります。会社が発展するようなアイディアがどんどん湧き出て、すぐに行動を起こします。たとえ、悪い影響が明らかになったとしても、今までの行動を振り返り、その行動を止める決断をします。

このように成功に導く行動を繰り返し「結果」を出し、周りからも成功者としての評価を得ることで、やっぱり自分はできると、「信念」は確信に変わっていきます。信念を強化して「確信」へと進化させるカギは、「行動」です。頭の中で信念を変えても、実際の「行動」を起こさなければ脳の神経回路は構築されず、習慣化されないため何の意味もなさないことになります。「行動」なき信念は、机上の空論でしかないのです。

信念に伴った行動を取ることで、「結果」がでると、その信念が強化され、さらに「行動」が強化され「結果」がでて「成功のパターン」ができる訳です。成功者はさらに成功することになり、成功者としての人脈や可能性が広がり、自分の「行動」にも確信が持てるようになります。

実際のコーチングでは、クライアントやコーチの期待に反して「結果」が出ないことがあります。分かりやすい原因の一つは、クライアントの「行動」が伴わないことです。「行動」が伴わなければ、当然「結果」も出ないわけですが、コーチはクライアントの「行動」が伴っていないことが分かると、アドバイスを極力避けながらも、そのことをクライアントにフィードバックします。

もしも、クライアントがコーチのフィードバックに対して、素直に受け入れて「行動」すれば、再度、立て直すことができますが、様々な言い訳をして行動が伴わない場合は、理想の結果は期待できません。

行動するための目標のハードルが高すぎるのであれば、行動が伴うレベルに下げる必要があります。もしも、目標のハードルを下げても行動に移せない人は、ゴールに対する無意識的な「制限する信念」が背後にあることが多々有ります。ブレーキをかけたままで、自転車のペダルをこいでいるようなものです。

例えば、ライフコーチングで、よく遭遇するのは「結婚をしたい」、「子供を産みたい」というゴールがある場合、相手がいることなので、様々な制約もありますが、無意識的に結婚したり、出産したりすると、自分自身の「自由がなくなる」という制限する信念が背後にあるケースです。この場合、コーチは、クライアントが抱えている無意識的な制限する信念に対してサポートしなくてはなりません。

「結婚や出産で本当に自分の自由がなくなるのか?」「自分の自由とはどのようなことなのか?」「結婚して得られるものと失うもののバランスはどうなのか?」など。コーチはクライアントが今まで考えたことのない盲点にスポットライトを当て、新たな信念の可能性を引き出すサポートが必要になります。


そうして、無意識の心にスポットライトを当てることで、ブレーキを外して結婚する人もいれば、独身で満足している人もいます。どちらが幸せなのかは本人が決めることなのです。

2016年9月23日金曜日

連載9 コーチングがうまく 「機能するタイプ」と「機能しないタイプ」

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載9 コーチングがうまく 「機能するタイプ」と「機能しないタイプ」

コーチングの基本的な目的は、「目的を達成したい!」「ある課題を解決したい!」「ある習慣を身に付けたい!」というクライアントの願望を実現するための支援です。支援する過程において、様々なコミュニケーションスキルが求められますが、コーチングの核心は、単なる「スキル」ではなく、クライアントの心の奥にある無意識にアクセスすることで、自己発見と気づきがもたらされ、それに伴って選択肢や可能性に広がりをもたらすことです。コーチングで大切なことは、クライアント自らが答えを見つけて、新たな人生の豊かさを発見し、自らの道を歩むことができるように、効果的に支援することです。

コーチングを効果的に行うためのコミュニケーションスキルは複数存在します。「傾聴」「承認」「質問」「要約」「フィードバッグ」は代表的なスキルとなります。このコミュニケーションをクライアントのタイプに合わせて上手に使い、互いの信頼関係が深まると、クライアントが心を開き、核心に触れるコーチングが展開されることが増えてきます。クライアントからは、様々な課題が提示されます。「何かの目標を改善したい」、「人間関係を改善したい」など、多くの場合は、「問題」にフォーカスするよりも、「解決」へと導かれるようにコーチが支援していきます。

コーチングがうまく機能しやすいタイプの人は、
  • 「コーチングで得たい成果が明確な人」
  • 「得たい成果と現状とのギャップが明確になっている人」
  • 「コーチを信頼して本音で話せる人」
  • 「自己矛盾に遭遇した際、積極的に自分に向き会おうとする人」
  • 「コーチからのアドバイスや答えを要求するのではなく、自分の中にある答えを積極的に引き出そうとする人」
  • 「素直にコーチからのフィードバックを受け入れられる人」


一方でコーチングが機能しにくいタイプの人は
  • 「コーチングで得たい成果が明確でない人」
  • 「得たい成果と現状とのギャップが明確になっていない人」
  • 「コーチとの信頼関係が希薄で建前でしか話せない人」
  • 「自己矛盾に遭遇した際、積極的に自分に向き会おうとせず、環境や他者のせいにする人」
  • 「コーチからのアドバイスや答えを期待して、自分の中にある答えを積極的に引き出そうとしない人」
  • 「素直にコーチからのフィードバックを受け入れられない人」
  • 行動を制限する信念に遭遇した際、柔軟に変えられない頑固な人


実際のコーチングのセッションでうまく機能する場合、コーチは「効果的な質問」をするだけで、クライアントは積極的に自分の中にある答えをどんどん引き出していきます。セッションを終えてみると、8割以上はクライアントが話していたということもあります。その一方で、コーチングのセッションでうまく機能しない場合は、コーチが多くを語り、アドバイスやコンサルティング的な説明に偏る傾向があるときです。クライアントはコーチに依存的になり、自らの責任を負わななくなる傾向が生じてしまいます。

コーチングでうまく機能するかどうかのポイントは、クライアントが本気でその目標に向き合う覚悟があるのかどうかという「コミットメント」です。そのコミットメントの度合いが最低でも半分以上なければ、ほとんどの場合うまく機能しません。もしも、クライアントに50%以上のコミットメントがあれば、コーチとの双方向のコミュニケーションを通じて、様々な視点からアイディアを出し合い、可能性を検討し、コーチはクライアントがスムーズに行動に移していける支援を行います。基本的に他人に強制しても、実際の行動には移り難いものです。クライアント自らが「決める」というところが大切なポイントになります。


2016年9月16日金曜日

連載8 視野を広げるためのクセづくり

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載8 視野を広げるためのクセづくり

今まで「蟻の目」に偏った習慣が身についている人は、それが分かったからといって、すぐに「鷹の目」が習慣化するものではありません。「無意識」的に身についた心のクセですので、まずは、「蟻の目」の習慣でどのようなところが問題なのかをしっかりと認識することが必要になります。

もしも、「蟻の目」による問題が明確なのであれば、その習慣を変える必要もありませんし、「蟻の目」が必要な場合も多々あるはずです。まずは、ある問題に対しての「蟻の目」のメリットとデメリット、「鷹の目」のメリットとデメリットを整理することが必要かもしれません。「蟻の目」に偏る傾向のある人は、0か100か、あるいは白か黒かの思考グセもある方が多いようです。

人は何らかの「関係性」の中で生かされています。今、自分の置かれている立場での関係性を高い視座からみることも大切です。社会人であれば、家族の一員であり、会社の一員であり、町内会や自治会の一員、ジムの会員、PTAの一員、勉強会の一員など、さらに広くすると、市民の一員、県民の一員、国民の一員、アジアの一員、世界の一員、地球の一員など様々な関係性の中にいるはずです。

関係性のない人はいないはずです。何か問題がある場合、「蟻の目」から「鷹の目」に視野を広げる習慣を身に着けることで、見方、とらえ方、受け止め方に変化があるはずです。まずは、意識的に「鷹の目」の習慣を繰り返し訓練することです。自分が関係する立場を意識して、時間軸では過去の歴史を振り返り、未来の自分、すなわち生命が終わりを告げるまでを想像する。過去の歴史は変えることはできませんが、未来の自分は自由に予測することが可能です。難しく考えることはありません。脳のエクササイズだと思って気軽に思考訓練すると、知らず知らずの内に「鷹の目」の思考グセが身につくでしょう。

視野を広げるためのエクササイズをしてみましょう。

静かなところで、目を閉じて、心地よい姿勢を保ちましょう。
椅子に座っているかもしれませんし、座禅を組むように座っているかもしれません。
まずは、自分の呼吸に意識を集中しましょう。

最初は空間的な視野を広げていきましょう。
ゆっくりと呼吸をしながら、自分の身近な人間関係から漠然と意識していきましょう。
家族かもしれませんし、社内の関係かもしれませんし、何かのクラブやサークルの関係かもしれません。

この時、大事なのはいいとか悪いとかの判断や評価を入れないことです。ただ単に関係性を意識しましょう。

関係性をどんどん広げていきましょう、家族の一員、親戚の一員、社会の一員、地域の一員、市民の一員、県民の一員、国民の一員、アジアの一員、世界の一員、地球の一員、そして、最後は宇宙の一員かもしれません。

次は時間的な視野を広げていきましょう。

1年後の自分と周りとの関係、2年後の自分と周りとの関係、そして、5年後、10年後、15年後、20年後、30年後の自分と周りの関係性はどのようになっているでしょうか?
自分の年齢と合わせて自由に想像しましょう。


一般的に年齢を重ねるごとに否定的未来を想像しがちですが、肯定的な未来を想像するようにしましょう。

この視野を広げるためのエクササイズは1分以内に終わるかもしれませんし、5分ぐらいかかるかもしれません。ご自分のペースでゆっくりと行ってください。

毎日習慣化して、3ヶ月もすると、意識から無意識へと学習されて、自然に視野が広がるクセがついているでしょう。

2016年9月15日木曜日

連載7心の視野を広げるこつ

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載7 心の視野を広げるこつ

慢性症状などの身体の問題や、人間関係などによる心の問題は、部分的な構造や機能、あるいは特定の人というよりも、全体的なシステムや「心の構造」に本質的な問題が隠れている場合が多くあります。連載6でご紹介したメジナという魚の例でいえば、いじめっ子のメジナが悪いのではなく、狭い水槽という構造が本質的な問題であって、水槽から広い海の中に移動すると生態系、すなわちシステムが変わって問題が解決するわけです。

生活環境というシステムが脳に与える影響については、動物実験でも研究されています。老齢のネズミを2つのグループに分けて、一方は遊具のたくさんある広い飼育環境かで活発的に生活させます。他方は非常に狭い空間の飼育環境下で生活させました。その結果、遊具が沢山ある飼育環境下でのネズミグループは、脳の細胞が増えていることが確認できたのです。要するに、狭い空間では心の視野も狭くなり、脳の細胞も活性化されずに衰えてくるのです。人間でいえば、外に出て運動したり、人と交流して会話を楽しんだり、好奇心をもって色々と勉強したりしたほうが、脳細胞がどんどん活性化するということです。

人間関係でいろいろと問題があると、引きこもりがちになります。そして、多くの場合、「怒り」、「悲しみ」など一つの感情にフォーカスしがちです。しかし、そこにフォーカスしても本質的な問題に変化は促されません。それよりも、その感情が引き出される「背景」や「心の構造」に注目して、客観的に自分の心を理解し、心の視座を高く、視野を広げることに注力した方が、ネガティブな感情から簡単に抜け出せるのです。例えば、「怒り」の感情の背後には「~すべき」「~ねばならない」といった自分が大事にしている信念が関係します。相手がいる場合は、相手の「~べき」と自分の「~べき」のルールの違いが分かるとさらに視野が広がりますし、自分が信じているルールはどこからきたのかがわかると、さらに視座が広がります。

ビジネスの世界でも、視野を広げるために、「鷹の目」、「蟻の目」で見ることの大切さが語られています。「鷹の目」とは、鷹が大空から眺めるように、大局から全体をとらえる見方です。「蟻の目」とは、細部に意識が向くように細かくものごとを見る見方です。どちらの見方も大切な見方ですが、「木を見て森を見ず」ということわざがあるように、「蟻の目」だけに偏って視野が狭くなる方に問題が生じる傾向があるようです。

視野を広げるためには、時間軸の長さも関係します。実際に目の前にある問題や成果は、今に至る数週間から数か月前に生じた出来事や行動の結果生じたものです。また、目の前に大きな問題、あるいは大きな成果があったとしても、数か月後、数年後、数十年後にそれが継続するとは限りません。常に時間と共に変化していますので、長期的に物事のとらえ方や受け止め方を幅広く見ることが大切になります。

2016年9月14日水曜日

連載6「調和」を引き出すために

無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載6「調和」を引き出すために

心身の調和が乱れると「病気」になるということは一般的にも知られていることです。なのに病気という自分自身の中にある一部と闘うとさらに調和が乱れ「病気」のプロセスが進行して、病気の悪循環を起こしてしまうのではないでしょうか?長い臨床経験の中で、「病気」が治る過程をいくつも体験させていただいています。病気の一つの原因として、自分自身の中での「葛藤」があります。要するに、「頭で考える自分」と「腹の底で感じている自分」とが戦っているわけです。そこで、施術やコーチングを通じて、視野を広げていくことで、盲点が少なくなり、戦いに終わり告げ、病気も快復するという場合が多々あります。

東京海洋大客員助教授・さかなクンによると、メジナという魚を狭い世界に閉じ込めると、なぜかいじめが始まるというのです。『メジナは海の中で仲良く群れて泳いでいます。せまい水槽(すいそう)に一緒に入れたら、1匹を仲間はずれにして攻撃(こうげき)し始めたのです。けがしてかわいそうで、そのさかなを別の水槽に入れました。すると残ったメジナは別の1匹をいじめ始めました。助け出しても、また次のいじめられっ子が出てきます。いじめっ子を水槽から出しても新たないじめっ子があらわれます。広い海の中ならこんなことはないのに、小さな世界に閉じこめると、なぜかいじめが始まるのです。同じ場所にすみ、同じエサを食べる、同じ種類同士です。』と述べています。

心の状態も視野が狭くなると、秩序が不安定になり、自分の中で戦いが始まりやすくなるのです。「盲点」や「未知」の世界を広げて心の視野を広げることで、「自然体」に近づき、調和が引き出され、保たれやすくなるということです。情報があふれ過ぎている時代の中で、情報に振り回されて、自分を見失っている人も少なくはないのではないでしょうか?勇気をもって、もっと自分の無意識の世界に踏み入れて、隠れた自分の「盲点」や「未知」の世界を探索することがとても大切な時代になってきているようです。

2016年9月13日火曜日

連載5「自然体」になるにはどのようにすればなれるのか?

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載5「自然体」になるにはどのようにすればなれるのか?

「自然体」とは、「意識」と「無意識」との調和によって生まれるもので、昔から心身統一という言葉が重要視されているように、心と身体との調和が自然体を創りだします。では、どうすれば「自然体」になれるのか?という疑問がわいてくるでしょう。これは難しい質問です。その人に応じて答えが違うかもしれませんし、答えがないかもしれません。ただ、言えることは、「自然体」は頭で考えて創り出すものではなく、流れに身をまかせた結果、「意識」と「無意識」との壁が取り除かれた結果得られるということです。頭で考える「意識」よりも、身体で感じる「無意識」の方が優位になっているときでもあります。そういつときは、自然に身を委ね、何かを手放して、あるがままの自分を感じ取り、すべてを受け入れているでしょう。これは東洋思想からくる発想です。

自然治癒力を引き出すことを主とした治療者の立場で、「人間」、「自然」、「健康」などを深く探求していると、調和とは裏腹な「病気と闘う」とか「闘病生活」という言葉に違和感を抱くようになります。自然にできた病気は自分の一部です。また、自分自身で創った病気です。その自分と闘うということは、互いに攻撃し合うということです。やるかやられえるかの世界には「調和」という概念はありません。「病気」で苦しんでいる人には申し訳ない気もありますが、西洋医学的な発想で、癌など悪いモノは排除するという思想に影響を強く受けているのだと思います。東洋医学の看板をだしていても、西洋医学的に癌を撲滅するというような発想をもっている治療者もいるので、一概に東洋と西洋で判断するのは難しいのですが、大切なのは人や病気をどのようにとらえているかだと思います。

病気があるとかないとかを超えた「調和」という考え方が前提にあり、その結果健康が保たれるということだと思います。

2016年9月10日土曜日

連載4「無意識」の領域は、いわゆる「盲点」や「未知」の領域を知る効果

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載4「無意識」の領域は、いわゆる「盲点」や「未知」の領域を知る効果

 「ジョハリの窓」という心理学の分野でよく使われるモデルがあります。これは、対人関係などにおける「気づき」のグラフモデルです。このモデルは、アメリカの心理学者のジョセフ・ルフトとハリー・インガムによって開発され、二人の名前を組み合わせてジョハリと呼んでいます。ジョハリの窓は、4つの窓に分類されています。1番目の窓はオープン領域(開放の窓)で本人も他者も知っている領域です。

通常、この領域が大きければ、お互いに誤解が少なく、円滑なコミュニケーションができるようになります。2番目は、盲点の領域(盲点の窓)で、他者は知っているが、本人が知らない領域です。3番目は、隠された領域(秘密の窓)で、本人は知っているが、他人には見せない自分がいる領域で、この領域が大きすぎると他人とのコミュニケーションが不自然になりがちです。4番目の領域は、本人も他人も知らない領域(未知の窓)で、この領域が分かればわかるほど無限の可能性が広がります。

PCRTやコーチングのセッションで、クライアントがこのような自分自身の「盲点」や「未知」の領域を知りたいという前提があれば、自分の成長や変容につながる「気づき」が得られる機会が多くなります。その一方で、成長や変化を望んでいるが、自分の盲点領域に目を向けようとしない。あるいは、自分の盲点を認めようとしない人は、前に進むことが難しくなります。言葉では言わなくても、「自分のことは自分で分かっている」という態度や雰囲気が漂って、その領域に目を向けることに抵抗を感じる人もいます。

コーチングやPCRTで効果が引き出せない理由の一つが、この「盲点」や「未知」の領域に踏み出せないことです。これは、コーチとクライアントとの信頼関係が希薄であるとのと同時に、クライアント自身がその領域へ進むことに抵抗がある場合があります。私の臨床経験では、この「盲点」や「未知」の領域に進むことが素直にできる人は、自分の無意識を認識することで、本来の自分らしさが引き出されます。そして、肉体的にも精神的にも「自然体」を取り戻すという感覚が多くなるようです。

2016年9月8日木曜日

連載3「無意識の領域」にアクセスするとはどういうことでしょうか?

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載3「無意識の領域」にアクセスするとはどういうことでしょうか?

通常の対話では「話の内容」に意識が向く傾向があります。また、多くの人はその話の内容によってコミュニケーションが成り立っていると判断しがちですが、実は顔の仕草や無意識的な表情、または身体的なボディーランゲージに多くの影響を受けるのです。これは、アメリカの心理学者、アルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」として広く知られており、言葉(言葉の意味)=7%、声のトーン(大きさ、質、話し方)=38%、態度(雰囲気、表情、動作など)=55%といわれており、人は、話の内容よりも、声のトーンやボディーランゲージの影響を受けるのです。要するに、言葉の内容=「意識」の領域、声のトーンやボディーランゲージ=「無意識」の領域であり、多くの人は「無意識」に影響を受けており、「無意識」がその人の行動を司っているということです。

この「無意識」の領域は、自分の体臭が自分ではわかりにくいように、自分では認識し難いもので、コーチングや施術などのセッションを通して、本人が気づきがたい「無意識」の部分をフィードバックすることで、意識していないもう一人の無意識の自分に気づくことができます。コーチがクライアントに代わって、「無意識」の部分を言語化してフィードバックすることも大切ですが、もっと大切なのは本人自身が自ら「無意識」の自分に気づくことです。クライアント自身が「気づく」ために、コーチは「間」を大切にしながら、「待つ」というスキルも求められます。この「待つ」というスキルは簡単なようで以外に難しいものです。対話の中でコーチが先にクライアントの盲点に気づいて、ついつい答えを言ってしまいたくなる衝動に駆られてしまうときがあるのです。コーチはクライアントに寄り添いながら「じっと待つ」という「間」を大切にしながら、クライアント自らが気づくプロセスをサポートしていくのです。

2016年9月7日水曜日

連載2 「気づく」とは、どういうことでしょうか?

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載2「気づく」とは、どういうことでしょうか?

「気づく」とは、今まで意識していない領域に足を踏み入れた際に生じます。もしも、「意識」と「無意識」に壁があるとすれば、その壁が壊れて、「意識」と「無意識」の領域の風通しが良くなり、暗闇だった領域にスポットライトが当てられ、何気なく「気づく」といった感じではないでしょうか?「気づき」がもたらされる場合、それぞれに様々な過程があるようです。大きく分けると二つのパターンがあります。一つ目は対話の中で質問という「刺激」を受けて、ふとした瞬間に「気づく」というパターン。二つ目は質問を受けて、「混乱」の後、しばらくして「気づき」が得られるバターン。「混乱」をネガティブな感情としてとらえる人もいますが、「混乱」は「気づき」を得るための、大切な思考のプロセスになるでしょう。

コーチングを「意識的」、あるいは「意図的」に使いすぎると、脳の表層部分にある「理性」が制限して、脳の深層部分となる「感性」的な本音に近い心理が引き出されなくなる傾向があります。要するにマニュアル的に使うと、その意図が相手にも伝わり、心が閉ざされて建前だけで対話が進行して大切な「気づき」が得られなくなります。私も最初にコーチングを学び始めた頃は、いわゆる「型」、すなわちマニュアルから入ったわけですが、何か相手の心の壁を感じてしまうことがありました。今では、臨床現場での患者さんとの対話や質問をする際、意識的ではなく無意識的にコーチング技法を知らず知らずのうちに使っています。相手のペースに合わせて自然体で接することが多くなっています。

臨床現場やコーチングで私がいつも大事にしているのは、表面的な技法ではなく、深層的な「無意識」領域へのアプローチです。PCRTという心身相関のテーマを長年研究してきたこともあり、こころの「無意識」領域の扱いには慣れてはいましたが、コーチングの技法を学ぶことで、さらに「無意識」領域へのアプローチが知らず知らずの内に幅広くなったようにも思います。このように「無意識」的に幅広くアプローチすることで、相手の無意識の領域にアクセスすることが容易になり、相手が「何気なく気づく」という瞬間が増えているように思います。

2016年9月6日火曜日

連載1 コーチングの背後にある心理的側面のスキル

「無意識」にアクセスする「コーチング」を目指して 連載

連載1 コーチングの背後にある心理的側面のスキル

コーチングにはいろいろな種類があります。形式的には、個人を対象にする「パーソナルコーチング」、複数のグループやチームを対象とする「チームコーチング」、そして、自分自身を対象にする「セルフコーチング」です。内容的には、「ライフコーチング」、「ビジネスコーチング」、「リーダーコーチング」、「スポーツコーチング」などです。方法論的には、「インナーゲーム」、「ボジティブ心理学」、「NLP」、「オントロジカルコーチング」、「コ―アクティブコーチング」などです。

日本でもコーチングが広がりつつあるようですが、まだまだ多くの人の認識はスポーツのコーチという印象が強いのではないでしょうか?コーチングのコーチは何かを指導してくれる「コンサルティング」、あるいは何か役立つ知恵を授けてくれる「メンター」のような意味合いでとらえている人も少なくはないのではないでしょうか?日本ではまだまだ、「対話を通じてクライエントの自己実現や目標達成を支援する技法」という認識はあまりされていないようです。また、日本のコーチング関連書籍ではコーチングのスキルとしての基本であるコミュニケーションスキルが主に強調されている傾向もあるように感じます。

コーチングでは「心理的側面」を扱うスキルが要求されるので、効果を引き出すために基本的な対面技法として、傾聴、フィードバック、質問、提案などの様々な技法を学びます。しかし、肝心なところ、すなわち本質的な効果が引き出されるのは、表面的な技法よりも深いところの技法ではないでしょうか。深いところとは、人間の深層的な心理面に関係することなのですが、表面的な「意識」あるいは心理面を扱うのではなく、「無意識」の深層心理のところにアクセスできるかどうかが要で、その領域にさりげなく触れていくことで、さらなる成長や変容を促すコーチングが引き出されるようです。

また、コーチングの成果の多くは、思わぬところから転じることが多々あります。一つのマニュアルにそってコーチングをすすめて、期待通りの成果がでる場合もあります。しかし、人間の深層心理はそれほど単純ではありません。セッションや施術を通じて、コーチとクライエントとの信頼関係が深くなることで、今まで触れることのなかった「盲点」にスポットライトが当てられて、ふとしたきっかけでクライエントの「気づき」が引き出されるということがあります。その時、クライアントにとっては、大きな変化、変容へとつながる傾向にあります。

2016年9月1日木曜日

投球恐怖症、イップスの改善例とその注意点

経緯

14歳の中学生男子、野球部に所属しており、ピッチャー希望ではあるが、ファーストも守っているらしい。一週間前からほとんどのスローイングができなくなったとのことで、最初はお父様からの電話で問い合わせがあり、スタッフに当院でのイップスの改善事例などを尋ねたらしい。小学2年生の頃から野球を初めているとのことで、詳しく聞いてみると、以前からイップスの徴候があったようだ。お父さんもイップスの経験があり、相当に悩まれたらしい。また、お兄さんも高校二年生のときからイップスを発症し苦しんだという。お父様は、自分や長男の経験から次男はもう野球は止めなければならないだろうと心配しつつも、何とかイップスを治す方法はないものかとインターネットで検索し、当院にたどり着いたらしい。

1回目の施術

まずは、身体的なエネルギーブロックの検査で、頭部全体の反応点に陽性反応が示された。送球イメージの検査でも陽性反応。興味深かったのはすべての送球で陽性反応が示されたことだった。問診でもすべての送球で投げることができないとのことだったが、一応、生体反応検査法で確認した。すべての送球に関する検査で陽性反応を示すイップス患者は、比較的珍しい方で、もしも、イップスに程度があるとすれば、重症の部類に入るだろう。
PCRTの検査では、大脳辺縁系→信念に反応が示され、信念チャートの検査で、いくつかのキーワードで反応が示され、PCRTのプロトコルに従って施術を行った。

2回目の施術(前回施術から3日後)

1回目の施術後には、お父さんとキャッチボールをしてみたらしく、お父さんによるとある程度治っていたのでそのときは安心したらしい。でも、ボールが浮く感じがあるとのこと。大脳辺縁系→信念という検査結果から、信念チャートで示されたいくつかのキーワードで施術を行った。また、イップスの患者に陥りやすい、スローイングのフォームはこうあるべきといった、いわゆる「技術論」に意識を向け過ぎた誤作動記憶が示されたので、「技術論」に意識を向け過ぎる弊害を分かりやすく説明し、意味記憶と合わせて切り替えた。

3回目の施術(前回施術から4日後)

前回の施術から数日で試合があり、その試合にピッチャーとして先発で登板。しかし、一回で交代させられたらしい。「えっ先発したの・・・」という感じだったが、恐らく、ある程度イップスの症状も改善され、監督さんも先発で起用できると判断したのだろう。思うように投げることができずに、監督に交代させられ、後でひどく叱られたという。2週間前にほとんど投げられない状態から2回の治療で、いきなり先発投手を務めるのは早すぎたかな~と思ったが、その経験も誤作動記憶を引き出すうえでは必要だったかもしれない。その試合を振り返りながらピッチングを想像してもらうと誤作動記憶の反応が示されたので、PCRTのプロトコルに従って施術を行った。このとき印象的だったのは、自分の理想のピッチングのイメージができないことだった。自分のベストな投球をイメージしてみるように促すと多くの投手は想像できる。今まで理想の投球をイメージする訓練はしたことがなかったのだろう。そこで、「プロの選手でも先輩でもいいから、理想のピッチャーを想像してみて・・・」と質問すると、2つ年上の先輩のピッチャーが自分の理想としてでてきた。モデルとなるピッチャーを自分に置き換えて、あたかもその理想のモデルのように自分が投球している想像をするように促した。そして、生体反応検査法を行うと、不一致の反応が示されないので、そのイメージを使ってエピソード記憶の施術を施した。さらには自分の理想となる先輩のように投げている自分自身のイメージトレーニングもアドバイスした。

4回目の施術(前回施術から2日後)

初診時から反応が示されていた頭部全体の反応点の検査では、すべて陰性反応が示されていた。キャッチボールやピッチングでも陰性反応が示され、かなり誤作動記憶が改善されていた。他に違和感のある場面を本人に尋ねてみると、大分改善されているが、ノックでゴロがきてホーム(キャッチャー)に投げる際に違和感があるという。検査をしてみると「恐れ」というキーワードが示された。思い当たる「恐れ」を尋ねてみると、送球の際、ノッカーや後ろの人に当てるのではないか、さらには、もしも、暴投したり、人に当てたりすると、周りからどのように思われるかが恐れになっていた。PCRTのプロトコルに従って「恐れ」に関係する誤作動記憶を消去した。治療を終えて、付き添いのお父さんに聞いてみると、最初に比べると随分よくなっているとのこと。最初に電話で応対してくれたスタッフの言葉を信じてよかったと喜んでおられた。

考察

4回目の施術から2週間ほど来院がないので、恐らく改善されているのだろう。もしかすると、まだ、どこかに誤作動記憶が隠れているかもしれないが、改善した経験も踏まえて、問題があれば来院してくれるだろう。お父様によれば、監督さんがとても厳しい方で、その影響もあるのではないかと心配されていたが、生体反応検査法では、監督さん関係の誤作動記憶は示されなかった。イップスの症状を発症してしまうと、多くの選手が「技術論」に救いを求める傾向にある。イップスで治療に来られる選手には毎回のように説明する内容だが、イップスは「技術論」で治るものではない。治らないどころが、技術に目を向け過ぎると治りが悪くなる。イップスは「意識」と「無意識」の不調和によるもので、特に「意識」という「理性」による判断が「無意識」の「感性」、「本能」、「身体」をぎこちなくする。「意識」の部分が「無意識」に向かって、フォームや技術をああしろ、こうしろと命令すればするほど、「無意識」がいうことをきかなくなり悪循環に陥る。イップスを克服するためには、まずは、「無意識」の心の状態を知ることが第一で、そこに「判断」を入れずに、ありのままを受け入れるこが重要である。そして、「どのように投げる」よりも「何のために投げる」ということを念頭に整理して投げることが大切である。身体はその目的に応じて、必要なフォームで投げてくれるはずだ。特に周りの指導者は技術的な指導に注目しがちになる。それも選手にうまくなってほしいという純粋な気持ちからなのだが、技術論に走り過ぎて、成長の芽を摘む危険をはらむので注意が必要だ。技術論が大切な場合もあるかもしれない。でも、「どのように○○しなさい」というよりも、「なんのために○○するのか」という質問を相手に投げかけた方が、数倍上達が早まるだろう。それはなぜだろうか?言うまでもないが、本人が主体的にその行動の目的を考えることが大切だからであるまた、人それぞれに体型や性格も違うので、ベストの技術というのはそれぞれに様々である。結果的に本人自身が苦労して紡ぎ出した技術がベストであって、ベストな技術が最初からあるものではないだろう。
イップスを克服するために、「意識」的に技術(フォーム)を「外」から部分的に変えようする傾向にあるが、多くの場合、それはうまく改善されないどころか、不自然になり、本来の能力が引き出されなくなり、足かせにもなる。イップスを本質的に治すためには、「無意識」的な全体像にアプローチすることが大切である。つまり、「内」から全体的に変えていかなければならない。例えば、ピッチャーであれば、「どのように投げるか」よりも「どんな球を投げたいか」という質問の方が、「意識」から「無意識」へ、「部分」から「全体」へ意識が向きやすくなる。多くの投手は、「伸びるような球を投げたい」という答えが返ってくる。すると、脳(無意識)では、伸びる球を投げるために自然にフォームを創るので、イップスという誤作動が入る余地がなくなる。
「理屈でうまくなる」というよりも「自然にうまくなる」という経験を多くのスポーツ選手が体験しているだろう。「自然にうまくなる」選手の多くは、目的意識が明確にあるようだ。目的が明確になることで、身体は無意識に自然に働いてくれる。目的が不明瞭なのに、身体を部分的に意識でコントロールしようとしても、無意識の脳は全体的に不調和を示すだろう。いくら脳の記憶装置が優れていても、入ってくるデータが不明瞭では、脳の計算処理が混乱して「正しい答え」がでてこなくなる。すると全身の筋肉に伝えられる指令が混線してミスも多くなる。要するに身体の筋肉の一部は「意識」的にコントロールすることができるが、全体の筋肉を「意識」的にコントロールすることはできない。全体をコントロールしているのは「無意識」的な脳であって、指、肘、肩、腰のように部分を同時に「意識」でコントロールすることはできない。
イップスを改善するためには、「外」から「内」へ、「意識」から「無意識」へ、そして、「部分」から「全体」へという考え方が大切になる。また、イップスを治すためには単に肉体へのアプローチや技術的なアプローチ、あるいは精神論的なアプローチだけではなく、心身相関という肉体面と心理面との関係性でアプローチすることが大切で、その背後にはコーチングのコンセプトや技法が使われている。

2016年8月22日月曜日

オリンピック選手のコメントに変化が・・・


今日でリオのオリンピック閉会式を迎えました。今回のオリンピックは単に競技だけでなく、選手のメンタル面に興味が注がれました。先日、たまたま目にしたオリンピックのテレビ番組で、重量挙げの競技で銅メダルを獲得した三宅宏実選手が試合後のインタビューを受けていました。インタビュアーが、「最後は、どのような心境で競技に臨んだのですか?」と質問すると三宅選手が「2回目は失敗しているので、後は、天に任せるだけで・・・」というようなコメントしていたのが印象的でした。大会前に腰痛が悪化したとのことで、恐らく最後は開き直って「無心」で挑戦したのでしょう。

最近、スポーツのメンタルトレーニングやコーチングなどの手法がだんだんと広く浸透してきているのか、スポーツ選手のコメントに変化が表れているように感じます。オリンピック選手ともなれば、国レベルの期待や世界からの注目度から生じるプレッシャーは、計り知れないものがあるとオリンピックを経験した多くの選手は語っているようです。「オリンピックには魔物がいる」と、体操で金メダルを獲得した内村航平選手が話していたそうですが、後に「魔物は自分自身で創りだしている」ということが分かったらしく、後輩の白井健三選手にアドバイスしていたといいます。

通常、ミスするはずのない場面でミスをしてしまうと、「何かにやられた!」と思いがちになり、「魔物」などのせいにしたくなりますが、実は自分の無意識が引き起こしているのです。「魔物」というのは、私なりに表現すると「無意識の誤作動」なのですが、この誤作動が生じる傾向は、深い心理面に関係するようです。私の心身相関に関連する臨床経験でも多くのスポーツ選手が、本来の実力が発揮できなくなるような誤作動記憶のパターンが浮き彫りにされることがあります。

選手それぞれに異なる誤作動記憶の背景がありますが、多くの傾向として、優勝して自分がチャンピオンの立場になると、「守り」に入ってしまう傾向があるようです。「守り」と対照的になるのが「挑戦者」の精神です。試合のパフォーマンスをサポートさせていただいている選手には、次の対戦相手やパフォーマンスを想像してもらい、心身相関的に「誤作動記憶」がないかどうかを検査します。自分の置かれた立場や地位を守るような気持ちで試合に臨むイメージをすると誤作動反応が示され、挑戦者の気持ちで試合に臨むイメージをすると、誤作動反応はなくなる傾向があります。

多くの選手は勝つために試合をしているので、「絶対に勝つ!」という意気込みで試合に臨むわけですが、「絶対に勝つ」という意識は身体機能に誤作動を生じさせやすくなる傾向があります。それよりも、「普段の練習通り」という思いで試合に臨むと、本来の実力が発揮され、理想的なパフォーマンスができる選手が多いようです。

今回、惜しくも4連覇を逃した吉田沙保里選手の試合直後のコメントから察するに、「・・・で申し訳ないです」あるいは、「日本選手の主将として、金メダルを取らないといけないところだったのに、ごめんなさい」というようなコメントは、多くのプレッシャーを背負って臨んだことが伺えます。もしも、「普段の練習通りに・・・」という思いだけで戦っていたら本来の実力が発揮できていたのかもしれません。それは単なる勝手な予測にしか過ぎないですし、相手がいる競技ですので、相手の実力が上回っていたのかもしれません。

「勝っても負けても、今まで練習してきた通りに全力が出せる」と、心の底から思えることができればいいのかもしれませんが、無意識の心はそれほど簡単ではないようです。

選手によっては、「周りからの声援が大きいほど、実力がだせる」という傾向の人もいますが、本番での無意識の誤作動記憶のパターンがあるかどうかは、事前に検査をすれば分かります。孫子の兵法に、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」とあります。敵の実力やメンタル面も含めた現状をしっかりと把握し、自分自身の実力や深いメンタル面も良くわきまえて戦えば、勝ち続けることができるということです。

昔から武道においても「無心」になることが重要視されています。スポーツ選手が勝利したとき、「無心で走りました!」「何も考えていなかったです!」などという「無心」であったであろうコメントを聴くことがあります。恐らく、それは「ゾーン」か「フロー」といった状態の時のことで、そのときに多くの選手はピークパフォーマンス、すなわち最高のパフォーマンスが発揮できるとだといわれています。

スポーツ選手をサポートする治療者として、単に肉体面だけでなく、このような隠れたメンタル面のケアができるかどうかはとても重要な役割になると思います。多くの治療者がもっと本質的なところに興味をもっていただき、活躍する選手の縁の下の力持ちになってくれればと願います


2016年5月2日月曜日

「生まれ変わった気がする・・・」信念に関係するコーチング手法


【はじめに】

肩や両大腿部の症状で来院していただいていた患者さんが、しばらく通院していただいて、筋骨格系のしびれや関節のこわばりの症状に加えて、内分泌系や自律神経系に関連する身体のだるさや疲れ感など様々な症状に悩まされていたことがだんだんと見えてきた。4~5年前から糖尿病の治療も受けているという。経営者であり、心理的なことも幅広く勉強されているという印象が感じられた。また、拙著の「体の不調は脳がつくり、脳が治す」も読んでいただいており、PCRTにも興味を持っていただいていた。

【経緯と施術者の主観】

ある来院日のこと、しばらく定期的に通院されている過程で、患者さんはいつも以上の体調不良を訴えていた。PCRTの検査をしてみると、複数のEB(生体エネルギーブロック)反応が確認された。そのEB反応は、患者さんが訴える症状に反映しているようにも思えた。特に膵臓部のEBと脳下垂体部のEBが、毎回繰り返されて陽性反応が示されているので、術者の直感で、何か潜在的に深い誤作動が関係しているだろうと感じた。患者さんに、「ここは、集中して治療されたほうがいいかもしれませんね。」と集中治療を促す。

患者さんにも同意してもらい、治療間隔を開けずに、ほぼ毎日集中的に通院していただいた。集中治療の同意を得てから、2回、3回、4回目と無意識に関連するある信念のキーワードが示された。4回目の施術では、そのキーワード(信念)の背後にある信念を認識され、その信念がどこから形成されたのかも認識していただいた。そして、次の来院日、前回の施術で、お父様から受けた信念があたかも自分の信念であるかのように生きてきていた自分に気づかれたとのこと。そのことは、様々な事柄に関係しており、そのことに気づけたことで、心も身体もすごく解放され楽になったとのコメントを頂いた。

その後、遠方での出張から帰ってこられて来院していただいた。通常、今回のような出張であれば、身体に疲れるが残っているのだが、前回の施術から疲れを感じることがなく、何か生まれ変わったようで、未来へのビジョンが開けた感じだとのコメントを頂いた。今回の集中治療の過程で、今までの人生で、高級マンション、高級車、船など欲しいものはほとんど手に入れているが、何か満足していない、何かもやもやした自分がいるということも話していただいていた。今回の「気づき」でその背後に隠れていた理由や「心の構造」も明確になった様子だった。

【考察】

この患者さんの場合、心理系の勉強もされていたので、無意識に関連する「誤作動記憶」を積極的に探索しようとする意識があり、それが好結果をもたらしたように思う。通常では、このような深い気づきを得るためには、ある程度の治療回数が必要になる。また、身体の症状が、心の誤作動記憶に関係していると頭で理解できても、そのパターンから心の底から抜け出したいと思えるかどうかも大切なポイントになる。いくら治療法が優れていても患者さんの無意識が協力的でないと効果が引き出せない。本症例は、無意識がもたらす影響を十分に理解され、本気で自分自身を見つめようとした成果だと思う。

今回の症例での施術ポイントは、自分が信じている信念(心のルール)の出処がどこからなのかということだった。人は誰でも、意識的にも無意識的にも何らかの信念(心のルール)に基づいて生きている。その信念の出処は大きく分けて3つに分けることができる。

1. 生まれ持った生来的な信念
2. 他者に影響された信念
3. 強要された信念

1. 生まれ持った生来的な信念
生まれたときからの持ち備えている心の性質がもたらす信念

2. 他者に影響された信念
多くは両親よってもたらされた信念で、その他、恩師、教師、あるいは本などによる架空の人物などからもたらされる信念。あたかも自分が生来的に信じている信念として錯覚しやすい。

3. 強要された信念
暴力的な手段などの恐怖によってもたらされた信念で、それを信じているふりをしないと生きていけない状況にいる。

上記の3種類の信念の中で、自己矛盾や心の不一致が生じやすいのは、2番目の「他者に影響された信念」で、心身相関的にも体調不良を生じさせる誤作動記憶を生じさせやすい。

PCRTを使ったコーチング手法では、意識と無意識との不調和を示す信念を瞬時に特定できる。術者と患者との共同作業でそれを解きほぐしながら、誤作動記憶の調整が可能になる。多く慢性症状の本質的原因がこの信念の不一致に関係していることが多い。この治療価値を理解してくれている患者さんは、心の底から喜んでいただいているという感覚が伝わってくる。それは、治療者にとっては大きな喜びとなる。

2015年12月7日月曜日

治癒効果に欠かせない「信頼」と「コミットメント」

「慢性症状が改善する人と、改善しない人の違いは何か」ということを長年探求している治療家の立場で考えると、治療効果を引き出す前提条件として、「信頼」と「コミットメント」が最重要課題であるとつくづく感じます。これは、行動心理学を取り入れたコーチング手法を臨床に取り入れるようになってからさらに明確になってきました。

私たちが患者に施す治療、あるいは施術というものは、外科医や歯科医が行う治療とは大きく異なります。例えば、外科医が骨折の手術をする場合、何回も治療を繰り返すということはありません。1回、あるいは2回ほどの手術で完了する。治療が成功するかどうかは、外科医の技量が90%以上影響を及ぼすのではないでしょうか?

患者が外科医自身の「人間性」を信頼しているか、外科医が施す「治療法」を信頼しているか、あるいは、完治するまで治療を継続し続けるという患者の「コミットメント」がどれだけ高いかということはあまり関係しないでしょう。外科医が有資格者である以上、その技術技能を疑うことも少ないでしょうし、何度も手術を繰り返すわけでもありません。

外科医と患者との信頼関係や、患者の治療に対するコミットメントは、構造的な問題を修復する限り、あまり問題にはなりません。その場合の治療が成功するかどうかは、ほとんどドクターの専門の技術技能に委ねられるのです。

さて、患者自身が持つ自然治癒力を引き出すことを目的とする治療の場合の「信頼」と「コミットメント」の影響はどうでしょうか?構造的な修復を目的とした治療とは性質が異なります。自然治癒力を引き出すことを目的とする治療者と患者との関係において、それは重要課題であり、治療を成功させるためには必須条件になるでしょう。

目には見えない「自然治癒力」というものは、「無意識」の心との関係性が深く、深層心理に深く影響されます。例えば、2年以上も腰痛の慢性症状を抱えている患者さんの場合、一回目の治療で効果が実感できたので、治療計画通りに通院され、徐々に症状が改善されて完治する。これは、慢性症状改善の通常の道のりです。

その一方で、通常の道のりから外れる患者さんもいます。同じような症状で、継続すれば基本的には治る可能性のある慢性症状なのですが、そこにブレーキをかける4つの要因があります。

一つ目は、「患者と術者」との信頼関係
二つ目は、患者と術者が選択する「治療法」に対する信頼
三つめは、自分自身の「自然治癒力」に対する信頼
四つ目は、患者の治療継続に対する「コミットメント」

一つ目の患者と術者の信頼関係は、簡単に言えば、人と人との相性です。言葉では表すことができないけれどもお互いに、あるいはどちらか一方で、合う合わないなどの違和感がある場合です。

二つ目は、術者が施す治療法に対して、患者が期待している治療法と食い違っている場合、あるいは、治療法の意図や目的が理解しがたい場合などです。

三つ目は、患者自身は治すつもりで来院しているのですが、無意識的に自分の症状が改善されることが信じられない、すなわち自分の治癒力が信じられない場合です。この場合、過去の治らない記憶が潜在的に学習記憶されている場合や医学情報による制限された信念、あるいは治ること、健康になることで重い負担がかかったり、責任が生じたりすることを潜在的に避けている場合があります。

四つ目は、患者が症状を継続的に治そうとする覚悟(コミットメント)が本当にあるかどうかです。コミットメントがある場合、患者は、完治するまで粘り強く治療を継続されます。そこまでの時間とお金を費やしてまで、治そうと思わない場合もあります。コミットメントは言葉だけでは分からない傾向があります。

「藁をもすがる気持ちで・・・治したい!」という患者さんが、完治していないのに一回、あるいは数回の治療で来院されなくなるという場合もあれば、言葉少なく、あまり信頼されていないのかなと感じる患者さんや「なかなか治らない」と不満をいいつつも、継続的に治療を受けるなど、その人がどのように行動するのかを確認するまでは言葉だけでは「信頼」と「コミットメント」の質や程度は分からないものです。

一言に「信頼している」といってもその種類は程度、質など様々な関係性があります。言葉で信頼しているというのは簡単ですが、その信頼というものは、結果的には行動で表されるということだと思います。

患者に信頼される側の治療者自身も、どの程度、あるいはどのような性質で信頼関係を維持しようとしているのか、また、治療者として患者に貢献するために生涯を掛ける覚悟、コミットメントがあるのか、自分自身に問いかけることは大切なことだと思います。

2015年11月3日火曜日

「部分」と「全体」との調和

先日は、偶然にも同じような原因パターンを抱えた患者さんお二人が来院された。主な症状は関節痛。原因となる本質な無意識的な思考パターン、すなわち「誤作動記憶」の性質が同じだった。

症状の原因から結果の大まかな流れをまとめると、無意識的な思考パターン⇒神経系への誤作動記憶⇒筋肉・関節の機能障害⇒症状

一人目の患者さんは、股関節と腰の痛みを訴えて来院。趣味でダンスをされている患者さん。以前はラテンを熱心に練習されていたが、最近になってモダンバレエを練習されているとのこと。

「練習の際にはどこを意識していますか?」と尋ねてみると、背筋を意識されているとのこと。PCRTの検査をしてみると、神経系に誤作動があることを示す陽性反応が示される。

今度は、「ご自分が理想となる全体的なイメージはできますか?」と尋ねると、最初は「???、あ~プロの人が踊っているイメージならできます・・」

「では、ご自分がプロの人のように踊っているかのようなイメージをしてみましょうか」

PCRTの検査をしてみると、誤作動反応は示されない。

「部分だけ意識し過ぎると、パフォーマンスが悪くなるので、全体的な理想のイメージをされたほうがいいですね」

二人目の患者さんは、肘関節の痛みを訴えて来院。高校の水泳部に所属しており、最近、本で腕の使い方や腕の働きに関係する筋肉の使い方の情報を独学で学んだとのこと。

「泳ぐときはどこを意識していますか?」と尋ねると、水をかく際の腕の使い方だという。

そのイメージで、PCRTの検査をしてみると誤作動反応が示される。

「部分的な技術ではなく、理想的な泳ぎになる全体的なパフォーマンスを意識して泳ぐイメージではどうですか」

そのイメージで、PCRTの検査をしてみると誤作動反応が示されない。

ということは、運動の種目は異なっても、共通する点は、部分的な技術改善を試みて練習すると、かえってパフォーマンスも偏り、神経や筋肉の働きが不調和になって、関節痛や筋肉痛などの症状を生じやすくなるということになる。

これは多くのスポーツ障害に共通する原因の一つである。パフォーマンスを向上させるために、指導者や教本など様々な技術論を指導されたり、学んだりすることで、いつの間にか、意識が身体の「部分」ばかりに偏って、「全体」との調和が保てなくなる。そして、かえってパフォーマンスが悪くなったり、故障しやすくなったりする事例は少なくはないようだ。

スポーツの技術を向上させるための部分的な指導を受けることも大切だが、「部分」と「全体」との調和は必須条件。むしろ、理想の全体的なパフォーマンスを先にイメージして、後から身体の部分がそのイメージについてくるという考え方の方が、自然にバランスが取れて技術も向上できていくようだ。

これは、人生におけるパフォーマンスという大きなゴールにおいても、同じようなことがいえるのではなかろうか?

例えば、人生において、仕事、家族、お金、家や車、健康、人間関係など様々な課題がある。どれも大切な課題であるが、もしも、お金や物質面だけの豊かさばかりに目を向け、健康面や人間関係をおろそかにしてしまうと、人生全体のバランスはどうなるだろうか?

大切なのは、自分にとっての人生をどのように過ごしていきたいのかという「全体」と、それを可能にさせる「部分」との調和ということになるだろう。「部分」と「全体」との調和は、スポーツに限らず、人生全体にも影響を及ぼすということを、常に意識しておく必要があるようだ。

2015年10月9日金曜日

『成長』は自分への「問いかけ」から始まる

先日のコーチング・セッションで、たまたまでてきた大切な「気づき」がある。小学校の教師であるクライアントさんは、チームコーチングを使った学級経営を行っている。担当のクラスの小学生に対して価値観を問うアンケートを試みている。

そのアンケートの問いが、自らに問いかける内容が多かったためなのか、最初に比べるとクラスが、全体的にとてもよい風土になってきたとのこと。クラスを受け持ってからチームコーチングを取り入れ、価値観を問うアンケート以外にも、ゴールや人間関係に関するアンケートなども行ってきた影響もあるだろう。

アンケートで自らのことを問うことで、知らず知らずのうちに「他者批判」ではなく、「自己反省」をする子供が増えてきたのではないかとのこと。そして、セッションでは、「問う」ということがいかに大切かという話題になった。

とても大切なことなので、改めて整理してシェアさせていただく。「問いかける」ということは「成長」のために欠かせない。能力的な成長には他者への問いかけが必要であるが、人間的な自己成長には特に自らに「問う」ということ大切になる。つまり、「問いかけること」は成長の源になる。逆にいえば、「問いかけること」を辞めてしまうと、そこから成長が止まることになるだろう。

「問う」ということを内向き」と「外向き」に分けてみよう。

  • 「内向きの問い」とは自分自身の思考、言動、行動、習慣などについて問うということ。
  • 「外向きの問い」とは相手の言動や行動、あるいは会社、組織、社会などついて問うということ。
  • 内向きの問いをすることで、「自責、自己反省」という傾向が生じるだろう。
  • 外向きの問いをすることで、「他責、他者批判」という傾向が生じるだろう。
教師は、子供の能力的な成長を支援する一方で、人間的な成長も重視している。人間的な成長が伴わなければ、学級経営もうまくいかなくなり、能力教育にもマイナスの影響が出てくるということを経験的にも学んでいるとのこと。

受け持った当初のクラスと比べると、かなり雰囲気が良くなっているとのこと。「他責、他者批判」の傾向より、「自責、自己反省」の傾向の方がクラスの風土が良くなることは明らかだろう。

この自分自身への「問い」は、生徒に限らず、教師に対しても大切なことであり、教育現場に関わらず、あらゆる分野で「問いかける」の大切さを忘れないようにしなければならないだろう。

『昨日から学び、今日を懸命に生き、明日への希望を持て。
大切なことは問うことを辞めないことだ。』
アインシュタイン

2015年9月9日水曜日

自己ベストの更新!! 未来への挑戦者

前回ご紹介させていただいた、水泳選手が大会で自己ベストを更新して、個人種目とリレーで九州大会に参加できるとの報告をいただいた。

試合前での検査でも安定した状態だったので、おそらくいい結果がでるだろうと期待はしていたが、実際の競技では何が起きるか分からない。

実際の競技でのパフォーマンスを何度もシュミレーションして、誤作動の緊張を取り除き、ベストな状態が維持できた様子。想定以上の結果がでたことにとても自信が持てたようだ。

興味深かったのは、ある程度、九州大会に参加できるタイムが出せるようになると、本場で、そのタイムが、維持できるようにと、「守り」に入る潜在意識がブレーキをかけていたことだった。

この「守り」に入るパターンは、潜在意識が生じさせる誤作動なのだが、スポーツ選手がある程度の成績を掴んだ時に陥りやすいワナでもある。

この「守り」に入るワナは、スポーツ選手に限らず、様々な分野でも生じるワナで、知らず知らずのうちに自分の能力を制限してしまうようだ。

例えば、組織の中である地位に就いたとき、その地位や立場を守ろうとする意識が潜在的に働いて、周りの人の動向ばかりが気になって、自分の更なる成長にブレーキをかけてしまうこともあるだろう。

長年、このような本質的な治療やパフォーマンス向上のお手伝いをさせていただいて感じることは、人は常に「挑戦者」としての立場を忘れないようにしなければ、自分で自分の能力にブレーキを掛けてしまうということだ。

何かにチャレンジし続ける心は、人を成長させ、心を豊かにさせてくれる原動力になると思う。

挑戦者であり続ける人は、さらに未来に向かって羽ばたき、輝き続けるだろう!

2015年4月3日金曜日

コア・マッスル強化トレーニングで腰痛? (コーチング手法を取り入れた症例)

高校2年生。進学校に通い勉強も熱心で、水泳の練習もまじめ、将来がとても楽しみな優秀な青年である。

最近、本屋さんで水泳選手のための体力強化が解説された本を購入したとのこと。書かれている練習方法が納得のいく内容だったので、それを参考にして腰部のコアトレーニングを始めたらしい。なぜか、そのトレーニングを始めると腰痛を感じ、泳いでいても腰に違和感があり、スムーズな泳ぎができなくなっているとのこと。

腰部に関連する全体的な検査では、個々の筋肉バランス異常はあまり見られない。そこで、コアトレーニングのイメージをしてもらうと、明らかに誤作動の陽性反応が示される。また、泳ぐイメージをしてもらったところ、それもまた陽性反応が示される。

コアトレーニングを始める数か月前に来院された際にも、水泳のイメージで反応が示され、その誤作動の治療をしていたので、直感的に、これは、新しく始めたコアトレーニングが関係しているのではないかと思った。

恐らく無意識的に、身体のバランスがコアトレーニングの方に傾きすぎて、何のために泳いでいるか脳が混乱している状態なのかもしれない。

脳の身体の関係性を探索するために、コーチング手法を取りいれながら、生体反応検査を行い、関係性による誤作動の陽性反応を観察。

「泳ぐ目的は何ですか?」

「えっ、早く泳ぐことです・・・」

「早く泳ぐというと、明確なタイムのゴールがあるということですね。そのタイムに達するとどうなるのですか?」

「九州大会・・・インターハイ・・・」いろいろなキーワードが出てきて、「インカレ???」でも大学では競技というよりも楽しんで泳ぎたいかもしれない・・?」

このような質問しながら、同時に生体反応検査をしていると、段階的な複数の目標のイメージに対して、陽性反応が示されていたので、「その数値的なゴールが得られたときと、あるいは、そこに向かっている途中のプロセスで得られる『モノ』はなんですか?」という深い質問を投げかけた。

「?????得られるモノ???」

「すぐに答えられるような質問ではないかもしれませんので、ホットパックの間に考えてみてください。」

10分後

「どうですか?」

「難しいですね・・・」

「この質問は、人の行動の背後にある価値観、分かりやすくいうと心のエネルギー源のような『モノ』を尋ねた質問です。」

「その価値観の例として、このようなキーワードがあります。」

「安心・安定」「刺激・変化・挑戦」「存在感・重要感・特別感」「つながり・愛情」「成長」「貢献」

「これらの言葉で、心に響くキーワードはなんですか?」

「挑戦」ですね。

「そうでしょうね。○○君は、例え目の前にあるゴールを達成したとしても、次を目指して挑戦し続けるでしょうね・・・」

「ゴールに挑戦することが心の栄養素になっている感じですか?」

「はい(笑)」

「では、そのことを十分に感じながら泳ぐイメージをしてみてください。」

「そのイメージで検査をすると、誤作動の陽性反応はでていませんね。」

「それでは、その挑戦というご自分が大切にしている価値観を意識しながら、先ほどのコアトレーニングのイメージもしてみてください。」

「それも陽性反応はでていませんね。」

「それでは、目の前のゴール、あるいはコアトレーニングに意識が向き過ぎて誤作動を起こしていたパターンから、ご自分の大切な価値観を意識してゴールに向かっている健全なパターンに切り替える治療をしましょう。」

治療後、

「あっ、はっきり見えるようになった・・・」

いきなり、何かと思ったら、天井に貼っている視力検査の記号が、治療前はぼやけていたのに、治療後にはっきり見えるようになって驚いたそうだ。

直接的に心因性視力障害の治療をしたわけではないが、間接的に視力が改善されたようだ。

コアトレーニングも大切だが、ゴールに向けた自分の価値観や信念などのメンタル面を統合させてトレーニングすることがもっと大切だという学びがあった。

施術にコーチングを取り入れて、総合的な視点で診て、効果を発揮した症例である。

2014年6月6日金曜日

心の「クセ」を知ることの効用!

自分で気が付いているか否かは別にして、他人から見て分かる人の「クセ」があります。「クセ」とは一般的にいうと、無意識のうちに行う習慣的行動のことを示し、体の動かし方、話し方など、自動的に繰り返される傾向を表しています。

これらの身体的なクセは、普段意識していないので心とは切り離されているかのように思われますが、実は心理面と密接に関係しあっており、無意識の心によってコントロールされているのです。広い意味では「習慣化」=「クセ」として理解することもできるでしょう。

人の「クセ」に関する研究は、20世紀初頭から始まり「行動主義心理学」や「認知行動療法」などに体系化され、今日においても世界的に幅広く研究が行われています。「クセ」は、「身体的なクセ」と「心理的なクセ」に大きく分けることもできます。

特に「心理的なクセ」は、「身体的なクセ」につながっていることが多く、その思考パターンを知ることで多くの気づきを得ることができます。無意識的な自分の「クセ」を知ることでどんな効用があるのでしょうか?ファミリーカイロで行われている心身条件反射療法(PCRT)やコーチングにおいても、奥に隠れたパターンを探索して、そのパターンを明確に認識することで、健康面やメンタル面などの改善につなげています。

「クセ」には変えたほうがいいクセと、変えないほうがいいクセがあります。変えないほうがいいクセとは、適度に運動するクセ、健康にいいものを適度に食べるクセ、いつも笑顔で挨拶するクセなどがあるかもしれません。変えたほうがいいクセとは、毎晩深酒をする、あるいはいつも人の批判ばかりするクセなどがあるでしょう。

このように目に見える習慣化されたクセは、本当に変えたいという本人の強い決意があれば、ある程度コントロールができるかもしれません。しかしながら、目には見えない心理的に習慣化されたクセは、自分で認識できないことが多く、それらは一般的に「思考グセ」、あるいは「思いグセ」として表現され、変えがたいものです。

このような心の「クセ」は複雑でつかみどころのないという特徴がありますが、「内向きの思考グセ」か、「外向きの思考グセ」かに大きく分けることができます。「内向きの思考グセ」は比較的には「安心」と「安定」などを求める傾向があります。「外向きの思考グセ」は、「挑戦」や「成長」を求める傾向があります。

現代のような平和な時代には「安心」や「安定」よりも、外向きに「挑戦」や「成長」を求めたほうが健全になれるでしょう。より良い変化がもたらされるのは、多くの場合自分の隠れた心のクセの全体像を認識し、新たな選択肢が増えた時です。あなたの心のクセは今どちらの方向に向いているでしょうか?

2014年2月6日木曜日

「挑戦」と「安定」とのバランス

年の初めには「今年も頑張ろう!」と意気込みを感じる人と、その一方で、「今年は無理をせずのんびりしよう!」と、年の節目に、気持ちを新たにする方も少なくはありません。それは、大きく分けると「挑戦」と、「安定」というテーマで考えることができます。この「挑戦」と「安定」は、「健康」や「人生」にとても深く関係していると私は思います。

「日常生活の心理学に関して、今世紀最高の研究者」とも言われているアメリカの心理学者のミハエル・チクセントミハイは、有名な「フロー理論」を提唱しました。フローとは「全人的に行為に没入している時に人が感じる包括的感覚」、「集中力が抜群で、活動に完璧に没頭している最高の状態」と表現をされています。

人は「フロー体験」をすることで、人間の無限の可能性を引き出し、素晴らしい成果を引き出すといわれています。その「フロー体験」が実践されていた職場として、創業者の井深大さんが健在だった当時のソニーが紹介されています。戦後に混乱期に掲げられた「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」・・・というソニー設立趣意書の創業理念に基づいて突き進んでいた頭脳集団が、「フロー体験」によって、当時としては革命的な製品を世に出してきたといわれています。

人は何もしないと「無気力」になります。社会問題にもなっている認知症にはこの「無気力感」が関係しているといえるでしょう。何らかのスキル(能力)を身に着けると満足を感じますが、だんだんとそれに慣れると「退屈感」を感じます。少しチャレンジして高いスキルを身に着けると自信がついて、「満足感」や「安心感」を感じ、さらには「幸福感」も感じるかもしれません。その一方でチャレンジの度合いが高くなると、「心配感」を感じます。さらにチャレンジの度合いが高くなると「不安」になりストレスを強く感じるようになります。

人は本能的に「安定感」や「安心感」を求める傾向がありますが、そこには「退屈感」が伴うことが少なくはありません。だからと言って「挑戦」ばかりが継続するとストレス度が高まり、心身共に疲弊しがちになます。人は「退屈」と「挑戦」の狭間にある自分に合った「フロー体験」をすることで、心身のバランスが保たれ、素晴らしい体験がそこから生まれます。

また、「最良の健康」を維持するためにも、この「フロー体験」を保ち続けることが大切です。何歳になっても、「適度な挑戦」は持ちつづける工夫こそが、この「フロー体験」を伴う「最良の健康」を維持する秘訣です。安定の継続=不健康といってもいいくらい、「安心」、「安定」、「満足」には危険が隠されているということも心に留めておきましょう。「挑戦」と「安定」とのバランスを保ちながら最良の健康と成長を維持していきましょう。