2018年5月8日火曜日

心因性斜視 本質的な原因療法


三十代女性が斜視の症状を訴えて来院。心因性斜視は子供に多く見られる症状で、当院でも施術を行っているが、大人で斜視を訴えて来院される方は珍しい。この患者さんは五ヶ月前にも斜視の症状で来院されており、2回の施術で一度完治した。今回は五ヶ月ぶりに再発したようだ。来院時には斜視の症状は診られないが、前回と同様に自宅でご主人と話している際に、「目の向きがおかしいよ・・・」と指摘されたという。

PRTで検査をすると、右斜め下と左斜め下の眼球の動きで陽性反応が示された。左右の眼球の動きでは陽性反応が示されないことから、上斜筋の機能低下が疑われる。神経学的には第IV脳神経の滑車神経の機能に問題がることが分かる。もしも、神経学的機能の側面だけを扱うのであれば、滑車神経を活性化させる刺激やリバビリを指示するかもしれない。滑車神経の機能が低下して斜視になっているのだから、その脳神経の機能を高めれば改善されるだろうというもっともらしい理屈になる。さらに専門用語を使って学術的に述べるとなるほどと思いがちになる。

しかしながら、その滑車神経の機能異常は結果であって原因ではない原因があるから機能異常が生じるのである。その機能異常は滑車神経の神経経路に沿った腫瘍などによる構造異常に関連があるかもしれない。その場合は西洋医学的な処置が必要になるだろう。もしも、構造的には問題がなく心因性であれば、どの程度その原因パターン(誤作動)が記憶化されているかによる。一時的な記憶であれば、機能異常を生じさせている神経系を活性化させることで早期に回復するだろう。もしくは何もしなくても自然に回復するかもしれない。しかしながら、心因性の誤作動記憶の神経回路がしっかり構築されていると、自然の回復は難しい場合がある。いずれにせよ、大元の原因療法が早期の回復につながることはいうまでもない。

機能評価チャートでは、筋骨格系のレベルが7、メンタル系のレベルが9で示される。PCRTのプロトコルに沿って検査を進めていくと、大脳辺縁系領域で、感情の「恐れ」に関係している事柄が二つあり、ご本人曰くこの二つの恐れは関連性があるという。3つ目に「利己心」の反応が示された。利己心というと一般的には自分勝手な・・・というイメージがあるかもしれないが、これは誰にでもある心の側面で、意味合いとしては幅が広い。この反応が示された際には「守ろうとしている何かがありませんか?」「恐らく大切にしようとしている心の面だと思いますが・・・」と質問させていただく。すると、大抵のクライアントさんは思いつくことが多い。

PCRTで調整後の機能評価ではメンタル系レベルが9から1、筋骨格系レベルは7から1まで改善した。原因となっていた心的内容は、以前と同じかどうか尋ねたところ、以前とは異なっていたという。一度、早期に改善しているので、今回も早期の改善が期待できると思う。心的因子が原因であれば、遠回りをせずにその原因に正面から対処する療法が早期の回復につながるだろう。けれども、身体的症状の原因が心理的側面にも関係性があるということに否定的な患者さんもいるので、そこに寄り添うのに工夫と忍耐が必要になる。

2018年5月5日土曜日

老犬の施術

15歳になる老犬(パピオン)が股関節部の強い痛みを訴えて来院。「犬が痛みを訴える???」となるかもしれないが、飼い主によると、いつものように犬を抱えようとした際に、「キャンーキャンー・・・」と吠えて痛がるとのこと。シャンプーの際も患部を触らせないという。痛みで散歩にも行けない状態。15年も面倒をみている飼い主はどこが痛いのかがある程度予測できるようだ。来院の際にも犬かごからなかなか出てこようとしない。ようやく出てきてみると、左後ろ足が震えている。触診をしたり動かしたりできないので、すぐに飼い主を「犬の代理」として、検査と調整を行うことにした。

代理検査法は飼い主との信頼関係がある限り有効な検査法になる。痛みの原因を探索すると、左後ろ足と腹部に陽性反応が示された。症状レベルは8、機能検査で、筋骨格系レベル10、メンタル系レベルは10と最も悪い状態。PCRTの検査では大脳辺縁系で「恐れ」のキーワードで反応が示された。飼い主に質問しながら的を絞っていくと、隣に引っ越してきた人が、壁をゴトゴトさせてかなりの騒音が聞こえてくるとのこと。苦情に伺ったが、引っ越したばかりで、壁に何かを取り付けていることのことらしい。PCRT検査で示された「恐れ」に関係する隣から聞こえる騒音イメージで調整。

次のキーワードは、「逃避」が示された。飼い主によると、「恐らく一人でいるときに、その騒音も関係しているのか、知らない人が入ってくるのではないかと恐れて、それを避けているのかな・・・」とのことで、「逃避」の調整も行った。施術後の機能評価レベルは全て1に改善。

それから3日後に来院、飼い主はかなり症状が改善されたと喜ばれていた。ちなみに、パミオンは2歳ぐらいから一年で人間に換算すると4歳ぐらい成長していくとのこと。例えば生まれたから6年で40歳で、15年だと75歳になるらしい。なので、連れてこられた飼い主によると、「これで歩けなくなって、逝ってしまうのかと・・・」と、ふと思ったとのことだった。

その後、3日置きぐらいに代理検査で2回ほど施術を行い、強い痛み症状はほぼ開放された。飼い主の方もホッとされた様子でたいへん喜ばれていた。

飼い主様から感想をいただきました。ありがとうございます。




2018年5月1日火曜日

イップスの根本的な改善

先日、2年前に送球イップスで来院され、今春から大学3年生になる野球選手が春休みを利用して来院してくれた。現在は社会人のクラブチームでピッチャーを担当しているとのこと。イップスはかなり改善されているが、少し気になることがあるらしく、持参してくれたiPhoneの投球フォーム画像を見ながらPRT検査。ご本人も気になっているところで陽性反応を示す。いくつかの潜在意識が関係する誤作動記憶に加えて部分的な投球フォームに関する意識への誤作動記憶も関係していた。

ビデオ映像から導き出された陽性反応は、ピッチングのテイクバックの動作だった。本人に質問してみると、「後ろに腕が伸ばせていない・・・」とのことだった。原因となる誤作動記憶を検査すると、過去の肩や肘の痛みの記憶が関係していた。関節に痛みが生じたままで、動作を繰り返していると知らず知らずのうちに、かばう動作を身体が学習してしまい、腕が自然に後ろに伸びなくなったということが疑われる。痛みの誤作動記憶の調整を行なった。

PCRTでは誤作動記憶のパターンを瞬時に検査することができるので、根本的な調整が可能になる。もしも、このような検査と調整をしなければ、恐らく、投球フォームを改造しようとするだろう。表面的には投球フォームの改造で改善しそうだが、潜在的心理面が関係する無意識の記憶(クセ)による影響はそれほど簡単ではない。意識でコントロールできれば、そもそもイップスにはならない。意識と無意識が離れているからイップスの症状が生じるのであって、そこの関係性にアプローチしなければ、根本的なイップスの改善が遅れるだろう。

2008年度の北京オリンピックで、米国の陸上女子100メートルハードル代表のロロ・ジョーンズは、トップで走っていたにも関わらず、最後から2番目のハードルに引っかかって金メダルを逃してしまった。この時彼女は、「足をしっかり伸ばそう」と意識してしまったと、後で語っていたという。これは、全体的なゴールへの目的意識から、部分的な意識へと変化したために、いわゆる誤作動が生じたのだと考えられる。最近ではビデオ映像を見ながらフォームの修正に意識を向ける傾向にあるが、部分に意識が集中しすぎてしまうと、体全体の調和が乱れて、イップスのような誤作動を生じやすくなる。

さらにパフォーマンスを上げるためのフィームの改造は効果的なるかもしれないが、イップスを改善するっためのフォームの改善はむしろ治りが悪くなる傾向がある。なぜなら、多くの選手は小学生の頃からその競技を継続しており、そのフォームで活躍されている。イップスの原因はフォームを変えたから悪くなったわけではない。問題の矛先を間違えないようにしないと改善は難しくなる。

「部分と全体との関係性」、「意識と無意識との関係性」、「心と身体との関係性」はイップスの改善には必要不可欠な概念であり、単に部分的なフォームの改造、あるいは、神経学的機能の改善だけでは本質的な改善は困難になるだろう。

2018年4月24日火曜日

PCRT基礎2 信頼関係に基づく『効果がだせる調整法』を伝授します。

PCRT基礎2 信頼関係に基づく『効果がだせる調整法』を伝授します。

PCRT基礎2で得られる学びの7つのポイント

   筋膜関連の誤作動調整法
関節系の患者さんで、時折、関節系の陽性反応は消失しているにも関わらず症状の残存を訴える場合はないでしょうか?その際、関節系の調整法に加えて『筋膜系の調整法』を加えることで施術効果が高まることがあります。筋膜の概念と調整法を分かりやく伝授します。筋骨格系の施術の幅が広がります。

   頭蓋骨関連、脳領域の誤作動調整
脳の中枢と脊椎の末梢との繋がりは切り離せない事実です。神経学的な観点のみならず、様々なエネルギー系のネットワークは中枢と末梢とを繋いでバランス調整を行っています。もしも、中枢や末梢との繋がりの誤作動が生じれは様々な不調が生じます。そのような不調の調整法を使うことでさらに施術効果が高まります。繋がりの誤作動を調整する効果的な『頭蓋骨調整法』と『ブレインマップ調整法』を伝授します。

   目安検査法と合わせて機能評価チャートの使い方
機能評価チャートと目安検査を合わせて使用することで、メジャーとなる機能異常の特定や施術前と施術後の評価が分かりやすくなり患者との信頼関係が高まります。施術者にとっても、機能異常の根源となる問題が明確になります。

   小脳機能異常から生じる様々な問題を分析できる簡便な検査法
腰痛や四肢関節痛も小脳の機能異常から生じている場合も少なくはありません。また、ふらつき感は三半規管由来なのか、それとも小脳由来の機能異常なのかを明確に判断しなくてはならないケースもあります。そのような鑑別が必要なケースでもPCRTの機能異常の検査は、患者さんにも分かりやすく体感的に納得していただけます。今回は特別に最新の小脳関連の検査法を伝授します。これは我々の臨床にとても役に立つと思います。

    臨床に役立つ神経学的機能異常の調整法
神経学を極めるには膨大な知識が必要ですが、私たちの臨床現場では神経内科医などのような知識は必要ありません。病理的な疑いのあるケースは専門医にお任せすべきです。私たちが関わる患者は病理学的な問題ではなく、神経学的な機能異常です。神経学的機能異常の調整はシンプルです。しかし、その機能異常は原因があっての結果です。神経学的機能異常を引き起こすには本質的な原因があることを忘れないでください。PCRTでは簡便な神経学的機能異常検査法とその本質的な原因を患者と共に探求します。

   部位別のマッスルテストを使った検査法と調整法
目安検査にもなる部位別のマッスルテストは、患者が筋力の弱化を体感するとこで、機能異常の存在の有無を明確に示すことができます。患者にも納得できるマッスルテストをマスターすることで、患者との信頼関係が深まります。

   メンタル系施術の導入と基本感情チャートを使ったその調整法
PCRT発足当初は、メンタル系のアプローチで患者との信頼関係がうまく築けずに効果が引き出せなかった受講者の事例をお聞きしていました。けれども、最近はどのようなタイプの患者にどのようなタイミングで応用するのか、どのように説明をしてメンタル系を導入するのかのアプローチの仕方が明確になり、効果を引き出せている受講者の声を多く聞かせていただいています。長年の研究で進化したメンタル系調整法のアプローチの基本を伝授します。



2018年4月23日月曜日

患者(クライエント)への「質問力」その11【チャレンジのスキル】

患者(クライエント)への「質問力」その11【チャレンジのスキル】

経験の長い治療者であれば、患者(クライエント)に対して「もっと、〜〜すれば早く良くなるのに・・・」、「〜〜の考え方を手放せば楽になるのに・・・」、あるいは「〇〇のように受け止めればもっと人生が楽になるのに・・・」などと心の中で感じたことはないだろうか。信頼関係が深ければ、治療者は率直にそのことを伝えてチャレンジすることもできるが、まだ、信頼関係が浅い段階で、そのようなチャレンジをしてしまうと、信頼関係が損なわれる可能性がある。「チャレンジ」とはこのように信頼関係を損ないかねない状況においても、患者のためになることを提案することである。患者の望む満足ラインでサービスを提供するのか、あるいは信頼関係が損なわれることを恐れず、患者の将来のためになることを提案してチャレンジするのかとても難しい判断である。

近江商人の商売十訓の中で「無理に売るな、客の好むものも売るな、客のためになるものを売れ」という言葉がある。客を治療現場の患者(クライエント)に置き換えると、「無理に治療するな、患者の好むものも提供するな、患者のためになるものを提供せよ」ということになるだろう。とりわけ慢性症状を抱えた患者さんの多くがメンタル面との関係性が原因で症状を長引かせている場合が多い。経験を積んでいる治療者は、直感的にそのことに気づいて、患者にメンタル系の施術を促すことがある。治療者の提案に従って、喜んでメンタル系の施術を受け入れる患者は、本質的な原因にアプローチするので治療効果も高く、理想的な治療結果が早期に得られることが多い。その一方で、時折、メンタル系の施術に抵抗を表す患者がいる。患者が早期に改善するようにと、患者の先々のことを考えての提案ではあるが、患者がそのような施術を好まなければ、患者が望む身体面だけの施術にとどめてしまうことになる。

患者のためを思っての提案だが、患者が好まなければ致し方ない。無理には治療できないので患者が望む施術法でベストを尽くさなければならない。だが、近江商人の「客の好むものを売るな、客のためになるものを売れ」というルールには反することになる。本質的な治療効果を提供したい治療者にとってはジレンマになるが、無理に押し売りはできない。このようなケースは珍しくはないが、この場合、治療者は施術の選択肢を提案しながら、時折、患者が次のステップへと進むためのタイミングを慎重に図って、チャレンジしていくことが大切だろう。

それにしても、本当に患者のためになるかの判断はとても難しい。患者のためになるからといってチャレンジして誤解を招くこともある。信頼関係を損なうようなチャレンジをして、ほんとうに患者の将来のためになるかどうかと問われると、実際には時が経たなければ分からないだろう。「チャレンジ」の背景にある考え方の多くは治療者の経験などに基づく信念から生じるが、その信念が本当に目の前の患者のためになるかどうかは分からない。「人間万事塞翁が馬」という諺がある。ある不幸な出来事が、将来は不幸なのか幸福なのか予想し難いように、患者のためになる予測される提案も、時が経たなければ本当のところは分からないということだろう。要するに、チャレンジする場合、患者のためになると考えることも大切だが、その提案が本当に患者のためになるかどうかは、時が経たなければ分からないということも心の隅に置いておくことが必要であるのだろう。

2018年4月19日木曜日

第73回AMセミナー

AMセミナー活動も17年目。多くの受講生がAMの技術技能を修得して、開業されて盛業している話を耳にするようになった。AM認定者が熟練者と呼ばれるようになり、セミナー会場で、初心者に丁寧に教えてくださる光景もそう珍しくはないようになってきた。「初心者」、「認定志願者」、「認定維持者」という3タイプの受講者がバランスよくチームとして学びを深めている様子がうかがえた。

私がAMセミナーを開催させていただいた当初、短い時間ではあったがAMセミナーの合間に、患者教育や治療哲学、さらには人間学のプレゼンもさせていただいた。要らぬお世話と言われそうだったが、人間力を一緒に高めていきましょうという願いから、「致知」という人間学雑誌もAMセミナーで紹介させていただいた。「致知」の購読はかれこれ約20年になり、今でも人間学の勉強は継続している。現在のAMセミナーでは、患者教育や治療哲学のプレゼンはほとんどしていないが、最近ではそのニーズもなんとなく感じる。

また、SNSSOE対策などのインターネットによる集客に力をいれている開業者も増えてきている。そのような知識や技能も盛業に大切だろう。しかしながら、長い目で見ると患者さんとの深い信頼関係を構築するには、治療家としての人間力が問われる。私は長年のセミナー活動を通じて、多くの先生方との出会いがある。直感的ではあるが、人としての魅力を感じる先生に対しては、多くの患者さんに喜んでいただいていることが想像できる。

多くの患者さんから信頼される治療家になるためには、単に知識、技術だけの能力だけでは貢献できない。人としての「在り方」「人間力」が問われる。どの職業でも同じではあるが、人間力を磨き続けることは必要不可欠だろう。人に役立つための根底には「能力」よりも「人間力」が求められるだろう。人間力というバックボーンがあっての知識や技術的な能力が必要である。LCAでは単に技術技能を提供するだけでなく、治療家としての在り方も深く追求し続ける学習共同体でありたい。


2018年4月11日水曜日

患者(クライエント)への「質問力」その10【フィードバックのスキル】

患者(クライエント)への「質問力」その10【フィードバックのスキル】

コーチングのスキルの中で、フィードバックというスキルがある。治療者(コーチ)が相手の鏡になったように、相手の表情や使った言動を客観的に伝えたり、治療者が直感的に感じたことを自分のメーセージとして、評価や判断を入れずにありのままに伝えるスキルである。例えば、相手が「〜された」とか「〜と言われた」というような被害者用語を繰り返し使っている場合、治療者は「あなたは、以前から『〜された』という言葉を多く使われているようですが、自覚はされていますか・・・」というようにフィードバックすると、患者(クライエント)は、「はっ」と気づいて、変化が促されることも少なくはない。このようなフィードバックは、相手を批判しているかのように受け止められる危険もはらんでいるが、あくまでもクライエントの鏡になって無意識的な心の癖をフードバックすることで、クライエントが気づかない盲点の視野を広げる手助けになる。

フィードバックの中には、相手の話す内容を整理して一つのキーワードで表現したり、相手の話した内容をまとめて表現する「要約のスキル」もある。対話の中で、相手が話している内容にまとまりがなく、話している本人も話の内容を整理できない場合がある。その場合、治療者が「それは、〇〇ということでしょうか?」と話の内容の要点を整理して言い換えることがある。もしも、その要約が相手の話したい内容にぴったりであれば、よく理解してくれていると相手は感じる。対話の中では、できるだけ相手が使っている言葉を大事にして「おうむ返し」をした方が、信頼関係を得やすいが、話の内容がまとまりがなく整理が必要な場合は、あえて、異なる言葉で言い換えたり、要約することで信頼関係を深めることができる。だが、相手が慣れない言葉で表現をしてしまうと相手との距離が離れてしまうこともあるし、相手が伝えたい内容の意図とは反する言葉で言い換えてしまうと、信頼関係を損なう要因にもなるので注意が必要だ。

相手の話をまとめたり、整理をする要約のスキルを使った以外に、相手の気持ちを察して先取りして共感するスキルもある。例えば、子育てのストレスを抱えて体調不良を生じさせているようなクライエントであれば、お母さんに、「お子さんは何歳ですか?」と尋ねて、お母さんが、「2歳です」と答えたとする。治療者が「その年頃は大変ですよね・・・」と共感のフィードバックをすると、相手は「私の置かれた立場をよく理解してくれている」と受け止められがちになり相手との距離が縮まる。けれども、やみくもに共感すれば効果が得られるというわけではない。子育ての経験もないのに共感をしても、不自然になるだろうし、相手の痛みや苦しみは本人でしか分からないことも多々あるので、相手の立場にたって正直に感じたままをフィードバックするのが信頼関係を気づくコツになるだろう。

また、クライエントの苦しみや悩みを共感しながらも、治療者は第三者的な立場で、クライアントがその負のサイクルから抜け出すことのできる視野を広げ、幅広くフィードバックすることが大切で、共感して患者の立場に入り込んだり、第三者の立場で引いたりしてバランスよくフィードバックしながらクライエントをサポートしていくことが大切だろう。