2018年8月23日木曜日

鼻水、鼻づまり(副鼻腔炎)

一週間前より鼻水、鼻づまりの症状で病院を受診。副鼻腔炎の診断を受け、処方薬を服用しているが、改善が見られずに来院。本患者さんは10年以上も前から腰痛などの症状がある際に時々ご利用いただいている。今回は病院での薬でも効果がないので、「何か原因が他にあるのではないか?」と根本的な治療を期待して来院。最初は「五感適応系」で、嗅覚や植物系繊維のアレルゲン情報、並びにいくつかの感情に反応を示していた。その後、アレルゲンの反応は消失し、潜在的なメンタル系の反応が毎回示されていた。10回目の施術でようやく症状の改善が見られ、休日の間は良かったが、仕事が始まってから少し症状がぶり返すとのことだった。

鼻水、鼻づまりの症状の患者さんの中では比較的治りが悪い印象を受けていたが、10回目にしてようやく家族関係に関係する潜在意識が整理された様子で、ご本人も、様々な原因が重なっている中で、ある一つの関係性が複雑に影響を及ぼしているということは、薄々は感じていたとのことだった。誤作動記憶に関係する詳しい内容に関してはご本人にしか分からないが、そのことが影響していたということは納得されていた様子だった。

通常医療では、鼻水、鼻づまりの原因は、感染症かアレルギーという診方をするだろう。一般では潜在的なストレスが関係するとは思わないのが普通だろう。しかしながら、心身条件反射療法を使った改善例を考察すると、鼻水、鼻づまりの原因は、単に感染症やアレルギーだけが原因ではなく、「メンタル系が絡んだ誤作動記憶」による場合も少なくはない。現代医療の知識情報にとらわれずに、純粋に身体に聞いて検査を進めていくと、最終的には辻褄が会うことが多く、患者さんも点と点が繋がって線となり、線と線が繋がって面となり、面と面が繋がって立体像が浮かび上がって、因果関係が明確になる。そして、それに伴って症状も改善される場合が多々ある。

症状の改善の鍵は、いかに患者さんの無意識に寄り添って、原因となる誤作動記憶を引き出すかによる。現代医療のケアも大切だが、それでは治らない時には、純粋に「無意識に聞く」ことが改善の近道になるだろう。

2018年8月9日木曜日

2018年度PCRT中級2のご案内

2018年度PCRT中級2のご案内

9月9日-10日に開催されるPCRT中級2では、主にアレルギー治療に関しての手法を学びます。スイスのアレルギー研究所が発表したデータによると、アレルギー患者は1950年代では非常に少なかったけれども、先進国では年を追うごとに増加し、2000年の時点では、何と3人に1人が何らかのアレルギー症状を抱えているといいます。現代医学では科学的な根拠に基づいて治療やアドバイスをしていると考えられますが、アレルゲンを避けるという「予防策」は効果があるのでしょうか?巷では花粉を避けるためのマスクやメガネなどの広告やアレルギー食材の表示をたくさん目にします。

しかし、最新の科学研究は、アレルギー食品などを避けることは、実はアレルギー予防に全く役に立たないことを突き止めました。つまり、アレルゲンを避ける「予防策」は、明確な科学的根拠が存在しないのです。これは、アレルギー医療の最新研究の現場を世界的に取材したNHK取材班が述べていることです。さらにアレルギー食品を避けることが、かえってアレルギーを発症する子供を増やしてしまっているという恐ろしい可能性すら指摘され始めているのです。現代医療はアレルギー症状を根本的に治すことが不可能だと考えていたため、予防策や症状を抑える対症療法で対応してきたのです。

しかしながら、22年前に日本人科学者がある特殊な免疫細胞の存在を突き止めたことに起因して、近年のアレルギー研究が飛躍的に進歩しました。現代医療においては、アレルギー医療の常識が根底から覆るようなパラダイムシフトがあったということです。簡単に言うと、「アレルゲンを身体から避ける」から「アレルゲンを身体に慣れさせる」という考え方に180度転換したということです。

現代医療ではその革新的な考え方から、2014年に「花粉症の舌下療法」という治療法が開発され、新聞、雑誌などで話題になり、根本的な治療法として期待されるようになりました。それは花粉成分が少量入った液体を舌の裏側に垂らして吸収させる治療法です。アレルギーの原因物質であるアレルゲンを敢えて体内に取り込むことで身体を慣らして完治させようという試みです。また、花粉の成分を入れたお米を食べることで花粉症を根本的に治す研究も進められています。

PCRT(心身条件反射療法)研究会では、20年ほど前からアレルギー治療の臨床研究が進められており、欧米で進められている様々なアレルギーの代替療法も参考にしながらその本質的な治療法を追求してきました。そして、現在のPCRTにおけるアレルギー治療は、明確なプロトコルに基づいて、効果的なアレルギー治療ができるように発展してきました。基本的には「アレルゲンを身体に慣れさせる」というコンセプトに基づいていますが、アプローチの仕方は、現代医学とは異なります。アレルゲンを「情報」=「エネルギー」として捉え、脳の可塑性を活用して、アレルギー症状を生じさせる誤作動の記憶を調整していきます。

アレルゲン情報をエネルギー的に身体に慣れさせることは難しいことではありませんが、様々な一般情報から由来するいわゆる根拠のない「思い込み」は、施術の妨げになることもあります。しかし、PCRTではそれが「思い込み」が関係しているのか、単に反射系に関係する「アレルゲン」の条件付けなのかを検査します。さらには、「アレルゲン」にプラスアルファーされた、大脳辺縁系に関係する複合した誤作動記憶なのかを明確にして施術を行うことができます。

PCRTの本質をしっかりとマスターすれば、アレルギー症状の患者さんをしっかりとサポートできる自信が身につきます。アレルギー症状は改善されないものだと諦めている患者さんは少なくはないと思います。そのような患者さんに貢献できるように治療の幅を広げてはどうでしょうか。様々な慢性症状と同様に、アレルギー症状の改善も、身体をエネルギー体として捉え、誤作動記憶という概念で治療をすることで、効果が出せることを確信されると思います。次回のPCRT中級2では主にアレルギー治療について学び、信念や意味記憶などの概念を深めていきます。皆様と共にさらに学びを深めていけることを楽しみにしております。

2018年8月6日月曜日

PCRT実践編ジストニアとイップスOne Dayセミナー

昨日、ジストニアとイップスOne Dayセミナーを福岡で初めて開催させていただきました。

前半、現代医学に基づいたジストニアの定義や分類、鑑別、ジストニアに関係する神経ネットワークやジストニアに関係する大脳基底核の主な機能や運動ループ、心因性ジストニアとイップスの神経学的メカニズムの仮説を学びました。医学的な文献に基づいた情報を説明し、PCRTを応用した問診のポイントや注意点を紹介しました。その後、痙性斜頸のアプローチの仕方やリバビリの手法、書痙のアプローチの仕方を紹介しました。

後半はイップスについての最新の情報をお伝えし、ゴルフイップスや送球イップスのアプローチの仕方を学びました。そして、パフォーマンス向上のためのフォローの仕方、マインドフルネスの活用などをご紹介しました。ワークでは「部分と全体」を体験するワークや誰にでもある「反復性のパフォーマンス問題」を課題に施術のアプローチを学びました。心因性ジストニアとイップスの症状改善は、PCRTでのアプローチが本質的な施術になるということを改めて理解していただいたのではないかと思います。

参加されていた先生方が認定者であり、遠方からこのセミナーのために日帰りで福岡まで受講していただいた先生もおられました。参加者の意識が高くとても有意義な実践編のOne Dayセミナーになったと思います。すでに、ジストニアやイップスの患者さんを多く施術されて、結果を出されている先生もおられましたが、今回のセミナーを通じて、さらに多くの患者さんをサポートしていただけること思います。熱心に受講していただきありがとうございました。

10月にも東京で実践編が開催されますのでよろしくお願いします。


2018年8月2日木曜日

身体は「症状」を記憶する

 今回のテーマを見て、「えっ?身体が『症状』を記憶する?それってどういうこと・・・?」と思った方がいるかもしれません。でも、当院をしばらくご利用いただいている方なら何のことなのかある程度お分かりいただけるでしょう。筋肉や内臓の働きを司る脳や脊髄の神経系には、コンピューターのメモリのように高性能の記憶装置が備えられています。私たちはその記憶装置のお陰で充実した健康生活を営んでいます。でもその一方で、記憶装置があるがゆえに慢性症状を繰り返して不健康な症状に悩まされる場合もあります。

例えば、梅雨の時期になると調子が悪くなる。台風が近づいてくると頭痛がする。このようにある条件付け(学習記憶)で症状が繰り返されるパターンがあります。このパターンはご本人が自覚している場合と自覚していない場合があります。最初は、「気のせいかな?」と思うのですが、毎回、その条件付けが再現されると、これは気のせいではなく確かにそのようにパターン化されていると確信します。しかし、通常の医療ではこのような場合、薬で症状を抑えるしかなく、当院に来院されて初めて症状につながる原因である誤作動記憶のパターンにアプローチできることが分かります。

複雑な原因が関係している慢性症状は、何が条件付け(記憶)されて症状を引き起こしているのか、自覚できないことがほとんどですが、当院で身体の反応を診る生体反応検査をすると、何が記憶されているのかすぐに分かります。長く放置された慢性症状ほど複雑化する傾向にあり、治療回数もそれなりに必要になります。しかしながら、回数を重ねるごとに、誤作動につながっている記憶が正常なパターンに上書され、消去法のように複数の誤作動がだんだんと消えていきます。

誤作動は主に脳と脊髄に記憶されており、当院では症状の原因となる『誤作動の記憶』を脳の三層構造に照らし合わせて検査していきます。脳の第一層目は、「脳幹脊髄系」、あるいは「反射系」と呼ばれており、この領域はメンタル面が関係しない「身体面だけの誤作動の記憶」が関係します。脳の第二層目は、「大脳辺縁系」と呼ばれており、この領域は感情や信念、価値観などの情動を司るメンタル系領域の記憶に関係しています。無意識の情動脳の領域です。脳の第三層目は、「大脳皮質系」と呼ばれる領域で、経験や様々な情報から得た理性的な知識によって条件付けされた理性脳の記憶に関係します。いわゆる「思い込み」によって生じる症状に関係する脳の領域になります。

症状に関係する脳の記憶は、私たちが普段ほとんど意識していない無意識的な内容ですが、当院の検査でその件に関連することを質問されると、ほとんどの患者さんがそのことを認識されます。症状に関係している誤作動の記憶を認識することができれば、パソコンやスマホを再起動するように誤作動を消去します。症状の程度や抱えている期間によって、誤作動の記憶の深さや数は人それぞれですが、治療回数を重ねるごとに誤作動は調整され、それに伴う症状もだんだんと改善されていきます。

誤作動を調整した後で大切なことは、何が症状の原因に関係していたかをしっかりと認識して記憶しておくことです。「慢性症状=記憶」です。脳の可塑性といって脳の神経回路は常に変化する機能を備えています。新たな学習と記憶の繰り返しで、新たな神経回路のネットワークが構築されます。施術によって原因パターンに気づいて学習し、記憶すれば神経回路が強化され変化が促されますが、記憶しなければ、元の症状を引き起こす神経回路に戻ってしまうわけです。

「全ての慢性症状=記憶」とは言い切れないにしても、多くの慢性症状には「記憶」が関係しているということを忘れないでください。「記憶」が慢性症状に深く関係しているということをもっと多くの人に知っていただけることで、たくさんの人々の健康レベルが向上すると思います。現代ではこのことを知らない方がほとんどです。慢性症状で悩んでいるご家族や知人の方がいましたら、症状の原因が「記憶」に関係しているかもしれないということをお伝えください。慢性症状から解放される可能性は十分にあると思います。

2018年7月24日火曜日

ジストニアとイップスの本質的な原因

ジストニアの原因は、医学的に特発性(原発性)ジストニアと症候性(二次性)ジストニアに大きく分類されています。特発性ジストニアは、病理学的に脳の構造的異常が認められないものです。症候性ジストニアは、別の疾患や事故などが元にあって二次的に生じたものです。その場合、MRICTの検査によって、大脳基底核(特に淡蒼球)などに病理学的な病変が存在することがあります。また、薬剤投与による薬剤性ジストニアも症候性ジストニアに含まれます。

当院のような代替医療の治療院に来院されるジストニアの患者さんの多くは、来院前に神経内科などの専門の病院で、障害の筋肉を司る脳や神経系に病理的な異常がないかどうか検査を行います。もしも、器質的な異常がなければ、「特発性ジストニア」となるわけですが、「器質的ジストニア」以外は脳や神経系に関連する「機能的ジストニア」として分類することもできます。では、何が脳や神経系の働きを乱す原因になるのかということになりますが、その多くは心理的な要因が関係しています。心と身体は密接に関係し合っているという観点で考えるとごく当たり前のことです。しかし、西洋医学の思想の影響でそこを切り離して考える医療者は多いようです。

西洋医学の論文で心因性ジストニアは稀とされる記述もありますが、西洋医学の診断の多くが機械論的な思想に基づいた目に見える「器質因説」に基づいており、心と身体の関係性による誤作動記憶という目には見えない心身相関に関連する「心因説」の存在の多くは検査対象外となりやすい傾向があります。そして、明らかな「心理-社会的要因」が見当たらない場合は「特発性ジストニア」として、対症療法的にボトックス注射や薬が処方されます。一時的な症状の緩和が見られる方もいるようですが、副作用があったり、本質的な治療法でないために症状が振り返されたりする傾向もあるようです。

現代医学における心因性ジストニアに関する症例報告を検索すると、あまり、報告されていないという印象を受けます。数少ない症例報告の内容は、心理テストでも示されるような明らかにメンタル的な問題が存在する患者の症例がほとんどで、私はそこに現代医学の盲点があるように感じます。当院に来院するジストニアの患者さんの多くが、神経内科などの専門医を受診されて、ボトックス注射などの対症療法を避けて来院されるケースで、また、病院で通常の問診を受けてもメンタル的には問題があるとは思えないような患者さんがほとんどです。

しかしながら、PCRTのプロトコルに沿って検査を進めると、心理-社会的な心因性の誤作動の記憶が検出されます。そして、その誤作動記憶が消去されるごとに、条件付けされた不随運動が徐々に改善されます。原因パターンの複雑さや広さにもよりますが、患者さんが早期に施術を受けるほど改善も早まる傾向にあります。PCRTで改善される心因性ジストニアの患者さんのほとんどが、無意識的レベルの感情や信念の記憶に関係しています。それは誰にでもある誤作動の記憶です。多くの患者さんはそのことがいわゆるトラウマとして原因になっていたということを認識されます。

代替医療を利用する患者さんの多くが「機能説」に基づくジストニアですが、当院に来院される患者さんも病院以外に鍼治療やカイロプラクティック、整体などの治療を受けて改善されずに来院されます。そのような患者さんにはどのような治療を受けたのかをできるだけ尋ねるようにしています。多くの患者さんは具体的な施術目的までは分からずに治療を受けている方がほとんどですが、多くの代替医療の治療院では「機能説」に基づいて、筋肉の緊張緩和や神経系の機能回復の目的で治療を受けているようです。

「機能説」に基づく治療法もいろいろありますが、神経学的なアプローチをする治療者は、ジストニアに関係する神経学的な機能異常の部位や神経経路を特定し、その機能回復を目的に神経学的な刺激を加えるリハビリを患者さんに指導します。脳の可塑性を活用したリハビリ療法ですが、患者さんはよほどの覚悟をしてリハビリを長期に継続する必要が求められます。もしも、長期的なリハビリが継続され、脳の機能異常部位への適切な刺激が行われれば、脳の可塑性が促進されて効果が現れる可能性があります。

しかしながら、神経学的な機能異常にはそれを引き起こす原因があります。繰り返しますが器質的な原因でない限り、機能異常の多くは心因的な原因が関係しています。脳や身体に記憶された誤作動は、単純な神経学的な機能低下という観点ではなく、無意識的に条件付けされた誤作動の記憶という関係性から考えることで、さらに早く改善が促されます。

スポーツの分野で知られているイップスの症状も程度や部位などの違いはあるにせよ、脳の誤作動記憶に関係して無意識的に筋肉の不随意運動が生じるという点においては心因性ジストニアと同じメカニズムです。意識と無意識とが離れすぎて脳と身体が調和できていないという点においても同じであり、どちらも意識と無意識の関係性、脳と身体の関係性、脳と環境との関係性など、「関係性」に基づく誤作動の記憶を書き換えることで本質的な治療につながります。

「器質説」に基づく原因療法は西洋医学、「機能説」に基づく療法は代替医療となりますが、神経系の機能異常にメンタル面が関係していることを忘れないでください。心と身体は切っても切れない密接な関係性があります。その「関係性」を含めて患者さんを診ることでホリスティックな本質的な治療が実現するのだと思います。

85日は、ジストニアとイップスに関するPCRT研究会をOneDayセミナーとして開催します。参加資格はPCRTの認定者に限定しておりますが、資格のある方はぜひご参加ください。ご一緒に治療の質を高めていきましょう。PCRTを利用したジストニアとイップスの症例報告はHPに掲載されていますので、下記をご覧ください。よろしくお願い致します。





2018年7月13日金曜日

PCRT中級1研究会を終えて

PCRT中級1の研究会ご参加ありがとうございました。今回はボリュームが多すぎて、後半の総合ワークのプログラムにしわ寄せが生じました。でもその前の各ブログラムのワークでは、それぞれの先生方がじっくりと学ばれている様子が伺えましたので満足していただけたのではないでしょうか?はじめて経絡のプログラムを受けた先生方にとっては覚えるところがたくさんですが、毎日、コツコツと復習していけば着実にマスターできる内容です。経穴人形を一体購入されて、井合穴の取穴を着実に覚えてください。経絡の流れに合わせて、臓器反応点も習得していただくと、確実に検査の幅が広がると思います。

「空間ブロック方向性刺激調整法」は臨床現場でも試してみましたか?研究会ではほとんどの先生方が目には見えないEBの存在を確認し調整にて施術効果を体験していただけたと思います。PCRTEB検査ルールで「EBは観察者が持っている情報(知識)の範囲内のフィルターを通して、診ようとする(検査する)から存在し、診ようとしなければ存在しない」ということを忘れないでください。目には見えない肉体外空間のEBを施術者が診ようとすれば、その存在は検査で示されるはずです。PRTの検査法に磨きをかけてください。

心身相関に関係する「マインド系領域検査」は試してみましたか?検査を行う前には研究会で紹介した「マインド系領域検査のゴールデンルール」を守って使用してください。まだ、ご自身の生体反応検査法が不安定だと感じていたら、まずは、ハード面の検査法で自信をつけてからソフト面の検査へと進まれることをお勧めします。今回は感情・価値観・信念などの情動や意味記憶やエピソード記憶のいわゆる「思い込み」に関する施術法をご紹介しましたが、以前よりもさらにシンプル化しているので使いやすいと思います。患者さんとの信頼関係を保ちながら活用されてみてください。

次回は85日に福岡でOne dayセミナーで「イップスとジストニアの調整法」をご紹介します。このセミナーはPCRTの基本ができているという前提で進めますので認定者に限定させていただいております。そして、99日・10日は中級2の研究会を開催します。アレルギー治療とソフト面調整法をさらに深めていくプログラムです。「心身条件反射療法」の名称の由来である「条件付け」=「学習記憶」の概念がさらに深まるプログラムになると思います。皆様のご参加を楽しみにしております。

2018年7月2日月曜日

顎関節症

「あっ、口が開くようになった!」と、患者さんが喜んでくれた。

二ヶ月ほど前に虫歯の治療目的で歯科医院を受診。その際、歯科医の先生から噛み合わせが悪いからと、頼んでもいないのに噛み合わせをよくした方が良いと、歯を削られたとのこと。その後、だんだんと顎や首の周りに痛みが生じて、口の開きが悪くなり、舌や頬の粘膜を噛んだりして辛いという。食事をするのも困難になっているとのこと。顎関節の痛みに加えて、首や肩の痛みも訴える。

施術前の機能評価では、首や肩甲帯周辺、顎関節のほとんどの動きで陽性反応を示す。施術は主にアクティベータ・メソッドのプロトコルに沿って調整。PCRT検査で空間ブロックの陽性反応が示される。ハード面の調整法として空間ブロックを調整。調整した後では、施術前の陽性反応は全て陰性化した。

調整後には、症状がかなり改善されて喜んでいただいた。本症例を考察すると、患者さんが言われるように、虫歯の治療を受ける前までは、顎関節の痛みなどはなかったので、歯を削られたことが原因になっていたかもしれない。おそらく、歯科医の先生は、ミクロの単位で歯を研磨して左右の歯が均等に噛み合うように構造学的な調整をされたのだろう。しかし、部分的な歯の咬合は調整されたかもしれないが、身体全体のバランスにしわ寄せが波及したのかもしれない。要するに不正咬合自体には問題なく、その構造的歪みも全体を補正する一部としてバランスが保たれていた可能性も考えられる。

歯科医やカイロプラクターの間で、歯の咬合や上部頚椎の構造的歪みが全身に影響を及ぼすとして、噛み合わせや上部頚椎の調整であらゆる症状が改善されるかのように主張する臨床家もいる。今回の症例では、単に噛み合わせの不正咬合を調整したことで、逆に顎関節や頚椎周辺の関節機能障害が生じたようだ。当院では全身の神経関節機能障害を調整することで症状が改善された。構造的な噛み合わせなどの調整をしたわけではない。

そもそも構造的な噛み合わせの不正咬合が悪いと本当に不健康なのだろうか?「噛み合わせの異常」は原因なのか、結果なのか?噛み合わせの異常が構造的なのか、それとも機能的なのか、大きくは二通りに分類することができる。噛み合わせが原因で、顎関節や首や肩の症状が引き起こされると主張する臨床家もいるが、実際には歯並びや噛み合わせが悪くても顎関節や首などの症状がない人も存在するし、たとえ歯並びが良くても顎関節や首、肩などの症状を抱えている患者さんもいる。

誤解のないようにあえて言うと、噛み合わせの調整を否定しているわけではない。もしも、噛み合わせの調整が必要であるならば、神経学的機能に基づいて筋肉系、関節系のバランス調整をした後で、歯科医による噛み合わせの調整をしてもらった方が良いだろう。患者さんから歯科に関することで相談を受けた場合はいつもそのように提案させていただいている。

人間の身体は常に流動的に動いており、知らない間に歪みを生じさせる。首の動きがスムーズな時もあれば、少し動きが硬いなと感じることもあるだろう。身体のどこかの部分に機能異常があれば、身体全体にも影響を及ぼすかもしれない。もしも、歯の構造的な調整が必要なのであれば、顎関節も含めた全体の神経関節機能を調整した後が良いだろう。もしも、身体が歪んだまま歯の調整をしてもらうと、身体が歪んだままで歯を噛み合せることになり、そのしわ寄せが他の身体に影響を及ぼすかもしれないし、他の身体の歪みが整うと、今度は歯の噛み合わせが合わなくなるということもありうるだろう。

身体の働きは全て関係しあっており、孤立した関節や筋肉、神経は存在しない。上部頚椎や顎関節周辺に機械的受容器がたくさん散在しており、神経学的に筋骨格系に多大な影響を及ぼすことはあるが、絶対的な原因になりうる存在ではない。あくまでも身体の部分であり、全ては「関係性」で成り立っている。というのが、長年の臨床経験を通じた私の治療哲学である。

本症例は、何れにせよ神経学的な機能障害によって、筋肉、関節系に不調が生じていたことは間違いない。前述したように、全身のバランスを補っていた歪みの咬合を構造的に調整したことで、顎関節や頚椎周辺の関節、筋肉系、神経系に影響を及ぼしたかもしれない。あるいは、頼んでもいない咬合調整による不信感に関係するストレスの影響かもしれない。歯科医の先生も患者のためにと咬合調整を行ったのだろうが、患者のニーズをしっかりと確認すべきだったのではなかろうか?

我々治療者は、基本的には患者さんが求めている施術を行うべきで、それ以上の施術を提案する場合は、本当に患者さんが望んでいるかどうかを確認し十分に理解してもらった上で行うべきだろうと思う。どんな良い治療法でも、患者さんが求めていない治療を行うと良い結果が伴わないことが多いということは私にも経験がある。恐らくその歯科医の先生も左右の歯が均等に噛み合うことが大切だという信念に基づいてのことであるが、その信念が相手に通じていなければ、悪影響をも及ぼしかねないと言うことは治療家として肝に命じておくべきことだろうと改めて思った